おいしく“たべる”。<連載>

普段の食事に1品プラス!
水煮缶でお手軽健康レシピ

撮影/菅原景子 取材・文/森本亮子

サバ缶、ツナ缶、サケ缶、イワシ缶、サンマ缶……みなさんのご自宅に水煮缶はありますか? 手軽に購入できて、おいしい上に保存がきくので便利ですが、じつは私たち働き世代にとって強い味方になってくれるんです!

「栄養満点で時短レシピがかなう水煮缶は、とてもオススメです」と話すのは、身体に優しいレシピが書籍やYouTubeで好評のローカーボ(糖質コントロール)料理研究家、藤本なおよ先生。健康、美容、ダイエットなどにも効果が期待できるローカーボですが、味付けがシンプルな水煮缶なら簡単にローカーボ料理を作れると言います。

そのまま食べてもおいしい水煮缶は、調理すると味わいがレベルアップするだけでなく、栄養素を効率的に摂れるといううれしいメリットも。簡単で健康的な水煮缶レシピを藤本先生に教えてもらいました。

手軽でおいしい栄養食材
水煮缶は良いことづくし

子供の頃からアトピーや風邪を発症しやすく、成人してからはすぐ疲れたり、花粉症、PMS(月経前症候群)、生理痛などにも悩まされてきたという藤本先生。

「20代でうつを経験した時に出合ったのが、『ローカーボ(糖質コントロール)』でした。実践し始めて2〜3か月で身体が疲れにくくなる、風邪をひきにくくなる、午後に眠くなりにくいなど、体質がみるみる改善していったんです。肌の調子もどんどん良くなって、とてもうれしかったですね。その時に身にしみて感じたのは、“心も身体も食べたもので作られている”ということ。『糖質コントロール』と聞くとかまえてしまう方もいるかもしれませんが、ちょっとした知識を実行するだけで意外とカンタン。特に水煮缶はヘルシーであっさりしていて食材として使いやすいので、今日から始めるローカーボライフにぴったりなんです!」

水煮缶は魚介を水揚げ後、工場ですぐに調理して真空保存するため、生の食材よりも栄養価が落ちにくいと言われています。サバ缶には中性脂肪やコレステロールを下げる効果のあるDHAや、血管を若返らせるEPAが多く含まれ、サケ缶は抗酸化作用が非常に高いアスタキサンチンがたくさん摂取でき、中骨入りのものならカルシウムも豊富。ツナ缶は鉄分が多く、特に生理中の女性や妊婦、経産婦さんは積極的に摂りたいところ。また、アサリの水煮缶には生のアサリの約9.5倍の鉄分が! 水煮缶は現代人に不可欠な栄養素が詰まったお助けアイテムなのです。

身近な食材で簡単においしく作れるローカーボレシピの達人、藤本なおよ先生。自身も食事習慣を変えたことで、子どもの頃からひどいアトピーに悩んでいたと思えないぐらいお肌ピカピカに! 

糖質過多とタンパク質不足は
水煮缶を取り入れて解決を!

疲れやすい、風邪をひきやすい、午後の眠気がつらいなど、日々の体調が優れない人こそ、ローカーボ生活をオススメしたいと藤本先生は言います。

「身体を作るタンパク質はとても大切な栄養素ですが、忙しい現代人はどうしても不足しがち。朝はパンだけ、昼は麺類やおにぎりで簡単に済ませてしまうなど、つい炭水化物を単体で摂ってしまいますよね。糖質は決して悪いものではなく、私たちの身体のエネルギーになってくれる重要な栄養素なのですが、気がつかないうちに糖質過多になってしまうのが問題なのです。
大切なのは、肉や魚、豆類などの良質なタンパク質をしっかり摂ること。私自身、うつを経験した時は、夕食がわりにおやつをつまみ食いしながら仕事するなど、まさに糖質過多&タンパク質不足でした。でも意識的に糖質をコントロールし、タンパク質を摂るようになって2〜3か月経った頃からメンタルが安定しだし、PMSや生理痛、偏頭痛も改善されました。食後の眠気には即効性があったので驚きましたね。疲れにくい身体が作られるので、活動量が増えて仕事のパフォーマンスが向上するはずですよ」

健康面だけでなく、美容にも良い影響が。肌や髪、爪もすべてタンパク質でできているので、摂取量が増えると美しくなれます。ポイントは「タンパク質を多く含む食材を、手のひら1枚分の分量、毎食摂ること」。肉なら1枚、魚なら1匹と意識するだけで、タンパク質の摂取量が増え、糖質量がおのずと減ってきます。低糖質&高タンパクな水煮缶なら気軽に実現できそうです!

藤本先生の著書『やせる・若返る・健康になる いいことこずくめの水煮缶レシピ』では、サバ缶・ツナ缶など7種類の水煮缶を使った、簡単で糖質の少ない健やかレシピを紹介しています。

水煮缶は栄養価が高いだけでなく、スーパーやコンビニでリーズナブルに手に入り、保存がきくので家庭に常備しておくと何かと便利。少しずつ消費しながら、非常時用に備蓄するのも賢い方法です。「魚料理は下処理が面倒ですが、水煮缶はそのまま食べられますし、調理もすぐにできる時短食材としても魅力的。さらに缶の汁にもともと風味がついているので味付けもラクチン。お味噌汁や煮物に汁ごと入れると旨みがプラスされ一石二鳥です」

そこで、簡単でおいしい3つの水煮缶レシピを教えてもらいました。どれも缶詰を使っていると思えない本格的なおいしさで、作り置きできるものもありますよ!

水煮缶レシピ①〜ツナ缶編〜
楽しい食感とクミンの香りがクセになる
ツナ缶とニンジンのクミンサラダ

不足しがちなタンパク質と良質な油を補え、ニンジン1本をペロリと食べられる賢いレシピ。冷蔵庫で2〜3日持ち、時間が経つと全体に味がなじんでしっとりした食感に。また違ったおいしさを楽しめます。

材料:(2人分)

  • ツナ水煮缶

    1缶(70g)

  • ニンジン

    1本

  • 素焼きのくるみ

    適宜

  • A
     -クミンシード


    適宜

  •  -オリーブオイル

    大さじ2

  •  -酢

    大さじ1

  •  -塩胡椒

    少々

\ 食材のポイント!/

今回は水煮のツナ缶を使用しましたが、サバ缶でも代用OK。ニンジンの代わりにズッキーニ、水菜、大根など、味が優しく食感の良い野菜を使っても美味。ニンジンのビタミンAは皮膚や粘膜の健康を保ち、くるみに含まれるビタミンEは身体の老化を防ぐパワーがあり、どちらも油と一緒に摂ることで吸収力がアップします。またクミンは、抗酸化作用が期待できるので美肌にも有効です。

ニンジンは皮をむき、約5cmの長さの千切りにする。くるみは細かく砕いておく。
ボウルに上記Aの材料(クミンシード、オリーブオイル、酢、塩胡椒)を合わせる。
STEP2に、切ったニンジンと砕いたくるみを加える。
ツナ缶は水気をしっかりと切る。水気が多いとサラダが水っぽくなってしまうので注意。
ボウルに、水気を切ったツナ缶を加える。
全体をよく和え、皿に盛れば出来上がり。「元気をくれるビタミンカラーは、お弁当のおかずとしても目を楽しませ、活躍してくれます」

「ツナ缶は、水煮缶のほかオイル漬けもよく売られていますが、今回は油を使わないヘルシーな水煮缶をチョイス。作りたてのシャキシャキした食感、2日目以降のしっとり食感、それぞれにおいしいのでたくさん作って冷蔵庫に常備しておくといいですよ。おかず、おつまみにと大助かりの1品です」

水煮缶レシピ②〜サケ缶編〜
野菜スティックがどんどん進む!
サケ缶のディップ

手が込んでいるように見えて、じつはサケ缶とクリームチーズ、調味料を混ぜただけ! サケの風味とクリームチーズの旨みが効いたディップソースが、野菜のおいしさを引き出してくれます。まろやかでクセがないので野菜が苦手な子どもも食べやすい1品。

材料:(2人分)

  • サケ缶

    1缶(150g)

  • A
     -クリームチーズ


    約100g

  •  -粒マスタード

    小さじ1

  •  -マヨネーズ

    大さじ1

  •  -レモン汁

    小さじ1


  • 好みの野菜


    適宜

\ 食材のポイント!/

マヨネーズと粒マスタードだけのシンプルな味付けながら、旨みもコクもたっぷり。サケ缶はタンパク質が豊富な上、アスタキサンチンの抗酸化作用でアンチエイジングが期待できます。クリームチーズとマヨネーズもじつは低糖質。野菜は生のまま食べることでビタミンや酵素が熱で壊れることなく効率的に摂取できます。ズッキーニやパプリカなどの緑黄色野菜のほか、セロリも相性良し。水煮缶はサバ缶やツナ缶でも代用OK。

ボウルに上記Aの食材(クリームチーズ、粒マスタード、マヨネーズ、レモン汁)を入れる。
STEP1のボウルに水気をしっかり切ったサケ缶を加える。
STEP2をよく混ぜる。フォークを使うとサケの身が細かくほぐれやすい。
細かくなったサケの身とクリームチーズが全体にしっとりなじみペースト状になったら完成。好みの野菜スティックを添えていただきます!

「とても簡単なのに、色合いが良く豪華に見えるのでおもてなし料理としても重宝します。冷蔵庫で2日ほど保存がきくのも便利。抗酸化作用の高い生野菜をたくさん食べられるのも、このレシピのメリットです。また、薄くスライスしたパンにニンニクの風味を付け、このディップを塗ってトーストすれば、気の利いたおつまみにもなります。抗酸化作用のある赤ワインにぴったりですよ」

水煮缶レシピ③〜サバ缶編〜
濃い旨みが本領発揮
サバ缶とミニトマトのアヒージョ

寒くなってくるこれからの季節は、熱々のアヒージョがぴったりです。サバとキノコの濃厚な旨みがオリーブオイルにぎゅっと凝縮され、トマトの甘酸っぱさがアクセントに。栄養豊富なおかずを、普段の食事にプラス!

材料:(2人分)

  • サバ缶

    1缶(190g)

  • ミニトマト

    4個

  • にんにく

    2かけ

  • しめじ

    1/2パック

  • オリーブオイル

    100ml

  • 塩胡椒

    少々

  • 唐辛子

    少々

\ 食材のポイント!/

オリーブオイルやサバに含まれる良質な油はホルモンバランスを整え、集中力アップにも一役買ってくれます。トマトは加熱すると、抗酸化作用のあるリコピンの吸収率が上昇。サバ缶はサケ缶でも代用OK。アヒージョの具はキャベツ、ブロッコリー、マッシュルームやシーフードなどでもおいしく仕上がります。ローズマリーやバジルなど、ハーブを入れるとおしゃれに。冷蔵庫に残った野菜を活躍させて!

ミニトマトは半分に切る。にんにくは薄切りに。しめじは石づきを取り、手でほぐしておく。
フライパンにオリーブオイルを入れ、中火にかける。
油がふつふつ沸いてきたら弱火にし、にんにく、唐辛子、しめじ、ミニトマトの順に入れる。
サバ缶はすでに火が通っているので一番最後に入れる。サバは身が厚いので、箸などで半分に割ってから入れよう。5分ほど加熱し、サバが中まで温まればOK。
サバの旨みと栄養成分が溶け出した缶詰の汁も余すことなく投入!
塩胡椒で味を調えれば完成!

「サバ缶は汁ごと入れることで味がまろやかになり、オリーブオイルとにんにくがサバ独特の臭みを消してくれます。サバには『痩せホルモン』と言われるGLP-1や、コレステロールを下げる効果のあるDHA、血管を若返らせるEPAが豊富に含まれているので、“美にも健康にも効く”おかずとして、ぜひ普段の献立に定番入りさせてほしいです」

水煮缶は働く現代人の
強い味方なんです!

サケ缶やサバ缶の味噌汁もオススメです。缶詰の汁ごと入れると旨みになるので、だしを取らなくてもOK。臭みが気になる人は、ネギや生姜などの薬味をプラスするといいですよ。根菜類を加えて味噌や醤油で味付けすれば粕汁にも。またサバ缶は、豆乳、コンソメ、キャベツなどの野菜類を入れた豆乳スープにしてもおいしいです。このように水煮缶の活用術はたくさんある、と藤本先生。

「サバ缶を煮詰めて水分を飛ばし、醤油とみりんを入れて炒めれば、栄養も旨みも凝縮されたサバフレークになります。これを、炒り卵と炒めたほうれんそうと合わせて三食丼にすれば、お弁当にも重宝しますよ。またサバフレークに、カレー粉やマヨネーズを合わせるだけでちょっとした一品になります。
また、サケ缶はホワイトソースと合わせてチーズをたっぷり入れたグラタンにすれば、魚が苦手な方やお子さんでも食べやすいですよ。その際、サケ缶の汁はしっかり切ってくださいね。切った汁は、お味噌汁などのほかの料理に旨み調味料として活躍します。さらに、サケ缶・ツナ缶は、水切りした豆腐と混ぜて揚げるとタンパク質たっぷりのナゲット風になり、子どもにも大人気です!」

和洋問わずフレキシブルに使える水煮缶は、料理が得意でない人でもさまになるレシピがかなう万能食材。アイデア次第で気軽にバージョンアップでき、おいしさと楽しさと利便性を兼ね備えた、私たちの頼れる存在です。水煮缶を上手に活用して、不足しがちなタンパク質を、普段の食事でおいしく簡単に摂りましょう!

「現代人が不足しがちな栄養素を手軽に摂れるのが水煮缶。また、時短調理できるという点も時流に乗っていますよね。どのレシピもスーパーやコンビニで200〜300円前後で売られている水煮缶で十分。最近増えたおしゃれな缶詰やご当地の魚を使ったローカル缶詰などを試してみるのも楽しいかもしれません」

INFORMATION

藤本なおよ
ローカーボ料理研究家。幼少期から弱かった身体を「ローカーボ(糖質コントロール)に出合い克服。「人間の身体と心は、食べたものでできている」をテーマに、2014年からローカーボ料理教室を主宰するほか、企業・飲食店のレシピ開発やセミナー講師としても活躍中。著書に『やせる・若返る・健康になる いいことこずくめの水煮缶レシピ』『世界一おいしいダイエット』。YouTubeで紹介しているオリジナルのローカーボレシピも手軽でおいしいと評判。
URL/http://www.lowcarb-land.com/
YouTubeチャンネル「なおよキッチン」/https://www.youtube.com/channel/UCxO5HNRIVDO4DKlZ0ooRDJQ 

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