“からだ”をつかう。<連載>

“顔の運動不足”を解消して、
マスク生活でもハッピー顔に!

撮影/藤井由依(Roaster) 取材・文/盛田栄一

普段はマスクで隠れているけれど、おうちで鏡を見ると、頬が少したるんできた気がする……。なんとなく、前よりも疲れているように見える……。コロナ禍による自粛生活が始まって、はや1年半。最近、顔のちょっとした“異変”を感じている人が増えています。それって多くの場合、「表情筋」の運動不足が原因だとか。そこで今回は、疲れ顔や老け顔を解消するための「顔の筋トレ」方法をご紹介。講師は表情筋トレーニングの第一人者、間々田佳子先生です。

筋肉は使わないと衰える!
意識的にトレーニングを

コロナ禍、ステイホーム、緊急事態宣言……。PC越しやマスク着用でしか人と会えない生活が続いていると、心も表情もどうしてもくすみがち。思い返してみると最近、心からニッコリ微笑んだりと、気持ちを表情に出す機会が減っているかもしれません。

間々田先生によれば、「目や口を動かす表情筋も筋肉なので、使わないとどんどん衰えてしまう」のだとか。特に「表情が乏しくなっているかも」と自覚している人は要注意。このままでは疲れ顔や老け顔が進み、第一印象が悪くなってしまうおそれも。今からでも遅くありません。「顔の筋トレ」を始めて、ハッピーな表情を取り戻しましょう!

もともとはアルゼンチンタンゴ世界選手権アジア大会で優勝するなど、プロのダンサーだった間々田佳子先生。30代後半から顔の衰えが気になり出し、「顔も身体と同じように鍛えられるはず!」と、表情筋トレーニングをスタート。2020年にオリジナルメソッド「コアフェイス トレーニング」を考案。現在は表情筋研究家として、テレビ、雑誌などで活躍中。“体内年齢19歳”という脅威の49歳です。

表情筋とは、目・鼻・頬・口を動かすための、顔の筋肉のこと。下の図のように、左右合わせて50ほどの細かな筋肉で構成されています。手や足の筋肉のように骨に支えられていないため、筋力が衰えてくると、重力に負けてどうしても垂れ下がってくるという悲しい宿命があります。

「表情筋の大きな特徴は、自分で意識しないと鍛えられないこと」と、間々田先生。「たとえば、『上腕二頭筋』はヒジの関節とつながっているので、日常的にヒジの関節を曲げたり伸ばしたりすることで動き、自然と鍛えられます。でも、表情筋はどの関節ともつながっていないので、簡単に動かしたり鍛えたりすることができません。『そこに筋肉がある』ということをしっかり意識しないと、そもそもトレーニングが難しいのです」

人の主な表情筋一覧。これらの中で、印象的な笑顔を作るには「大頬骨筋」「口角挙筋」を鍛えるのが効果的。二重あごを解消し小顔に見せるには「広頸筋」と「胸鎖乳突筋」、目力アップには「上眼瞼挙筋」がポイントになります。

前述の通り、表情筋は意識しないと鍛えるのが難しい筋肉。それだけに、どこをどのように鍛えればいいのか、間々田先生ならでのノウハウが重要になります。

「表情筋トレーニングのうれしいポイントは、短時間での成果が見込めること。腕や脚など身体の大きな筋肉と違って、表情筋は一つ一つが小さいのでトレーニングの結果がすぐに出やすいんです」

さらに注目すべき点は、表情筋をしっかり動かすことで、気持ちまで明るく前向きになれること。「表情は感情と直結しているので、顔を動かせば気持ちが動くし、笑顔をつくれば自然と明るく朗らかになります。これは心理学の実験でも立証済み。今、長引く自粛生活で気分が落ち込んでいる人が多いようですが、そういう人にこそ表情筋トレーニングをぜひ実践してほしいです」

顔の筋トレは意外と簡単!
悩み別、3つのトレーニング

それではさっそく間々田先生に、おすすめの表情筋トレーニングをレクチャーしていただきましょう。今回は、あなたを一気に疲れ顔・老け顔に見せてしまう、①二重あご、②目立つほうれい線、③目の周りのたるみ、の対策法3種を紹介。併せて、先生が特にPTRに実践してほしいという、④素敵なスマイルの作り方、⑤瞬時に気分をリフレッシュする方法、も教えていただきます。

トレーニングを実践する前に、まずは姿勢を正すこと。背骨から頭の先まで1本の柱を立てるイメージで背筋を真っ直ぐ伸ばし、胸を張ります。この姿勢でトレーニングを行うのが基本。「現代人はスマホやPCの見過ぎで猫背になっている人が多いのですが、猫背は顔のたるみの原因になるので絶対NG。姿勢を正せば血行が良くなり、トレーニングの効果も出やすくなります。また呼吸も楽になって、精神状態も安定しますよ」

表情筋トレーニング①
顔の輪郭がぼやけて太って見える……
「二重あご」には「舌筋プッシュアップ」

二重あごになる原因は主に、あご下にある「広頸筋」と「胸鎖乳突筋」の衰え。この二つの筋肉を鍛えるには、舌全体で上あごを強く押し上げる動きをするのが効果的です。

〜HOW TO 舌筋プッシュアップ〜

①背筋を伸ばし、②あごの角度を床に対して90度に保ったら、③舌全体を上あごにべたっと付けて強く押し上げます。そのまま最低10秒間キープ。このとき、あごから首にかけての筋肉をさわってみると、硬く締まっているのがわかるはず。これを1日最低3セット行います。このトレーニングで鍛えられる「胸鎖乳突筋」は “小顔筋”とも呼ばれ、首の皮膚を引き上げる働きをする「広頸筋」と共に鍛えると、早ければ3日後にはフェイスラインがすっきりしてくることも。何年も鍛え続けると、間々田先生のようにトレーニング時には首の筋がくっきり見えるようになります。

表情筋トレーニング②
頬が下がれば一気に老け顔に…。
「ほうれい線」には「頬のVトレ」

ほうれい線が深くなる原因は、頬が垂れてしまっていること。そこで、親指と人差し指を使って頬を持ち上げ、「大頬骨筋」と「口角挙筋」を鍛えます。

〜HOW TO 頬のVトレ〜

①背筋を伸ばし、目をぱっちり開きます。②下あごの力を抜いて、上の歯8本とその両側に若干の隙間が見えるように口を開いて笑顔をキープ。③親指と人差し指で「V」の字をつくり、手のひらを正面に向けながら、頬の肉を下から挟んで持ち上げます。この状態を5秒間キープ。④両手を左右に開くようにゆっくりはずし、笑顔をさらに5秒間キープ。これを毎日3〜5セット続けることで、ほうれい線が薄くなりやすく、顔がすっきり引き締まった印象に。

表情筋トレーニング③
目の周りのたるみで疲れた印象に…
「ぼんやり目力」には「アイトレ」

目の周りのたるみを解消すると同時に、眼球の動きをよくするトレーニング。これにより、周辺視野も広がって、身の回りのいろいろなところに気がつきやすくなるし、マスクをしていても目の表情が豊かになるので明るい印象を与えられます。

〜HOW TO アイトレ〜

①両手の指でおでこの皮膚が動かないように押さえ、目を見開きます。②鼻の下を伸ばし「ほー」っと息を吐きます。③息を吐きながら、黒目をワイパーのように左上〜右上〜左上〜右上と、ゆっくり動かします。“目から息を吐く”ような気持ちで行うと、目力アップにもつながるとか。左上〜右上のセットを、1日3〜5セット続けてみましょう。
「アイトレ」は目を見開くのがポイントですが、開き方にご注意。意識せずに行うと「前頭筋」を使って上まぶたを持ち上げようとするため、おでこにシワが入ってしまいますが、これはNG。正しくは、まぶたと眉毛の間にある「上眼瞼挙筋」を使うこと。最初におでこが動かないように指でロックしてから、上まぶたを奥に引っ張るようなイメージで見開くと正しくできます。

PTRにこそ実践してほしい
とっておきエクササイズ2種

プライベートでスターバックスをよく利用するという間々田先生。PTRの皆さんに、ぜひやってみてほしいトレーニングもあるとか。

接客業のスマイルトレーニングに!
「フィンガー・イン・スマイル」

「私はお店のスタッフの笑顔にいつも癒やされていますが、皆さんの笑顔をもっと素敵にする最新のエクササイズがあります」。そう言って間々田先生が教えてくれたのが、お客さまと接するときに理想的な笑顔がつくれる「フィンガー・イン・スマイル」です。

①おでこにシワが入らないようにしながら目を見開きます。②前述の「頬のVトレ」の要領(上の歯8本とその両側に少し隙間を作った状態)で、口を逆三角形に開きます。③右手の人差し指を上の歯と下唇でくわえます。④指をくわえたまま、「こんにちは」「ありがとうございます」などの挨拶を大きな声でします。これを繰り返しすれば、指をくわえていない状態でも、美しい笑顔のままで挨拶できるようになるとか。ちなみに右写真のように、指をくわえるときに下の歯も使うのはNG。あごのラインのシャープさが失われ、顔が大きく見えてしまいます。

休憩中の気持ちのリフレッシュに!
「ストレス・リセット」

「間々田先生といえばこの表情!」と言われるくらい有名な「ストレス・リセット」。一見、変顔をしているようにも見えますが、最も効果を実感できるエクササイズだそうです。

①背筋を伸ばして立ち、②両手をやや左右に開いておろし、手のひらを前に向けます。③目を見開き、舌をできるだけ下に伸ばします。④鼻からゆっくり息を吸って、⑤舌を出したまま、口から「ハーッ」っと一気に息を吐きます。これを3〜5回繰り返すと、気持ちがリセットされてストレスから解放されるそう。さらに脳の血流も活発になって、いいアイデアが浮かびやすくなります。「休憩中やトイレに入ったときなど、短時間で気分転換したいときに最適です」

表情がやわらかくなれば、
人間関係までやわらかく

今回は5種のトレーニングを教えていただきましたが、実践するのに最適な時間帯はあるのでしょうか。「たとえば、その日一日をキラキラした表情で過ごしたければ、朝一番がおすすめ。また、物を見るとき眉間にシワが寄るとか、笑うときにほうれい線が深くなるとか、人にはそれぞれ表情のクセがあるものですが、それらのクセをその日のうちにリセットしたい場合は、寝る前が効果的です」

ただし時間帯よりも大切なのは、日々の生活のなかでトレーニングを習慣づけること。「たとえば私は、家で掃除機をかけている間はずっと『舌筋プッシュアップ』を続けているし、トイレに入ったら必ず『ストレス・リセット』を行うようにしています」。どんなタイミングで実践するかは、やりやすいように決めてOK。1日わずか数分の努力で、表情は着実に生まれ変わっていくはずです。

「化粧品の広告モデルみたい!」とカメラマンも絶賛した、間々田先生の美しい横顔。37歳から顔の筋トレを始めて、現在49歳。表情筋トレーニングにどれだけの効果があるのか、先生自身のビジュアルこそが証明しています。

表情筋トレーニングを始めるまで、実は人付き合いが少し苦手だったという間々田先生。自分の気持ちがなぜ相手に伝わらないのか、ずっと悩んでいたのだとか。

ところが「トレーニングの成果でやわらかな表情がつくれるようになると、とたんに人間関係までやわらかくなったんです。それから、コミュニケーションがうまくいき出しました。人付き合いは、相手に伝える内容だけではなく、伝え方も大事。表情が豊かになれば、伝え方が上手になり、人生そのものも豊かになります。最近気持ちが沈みがちな人にも、『まず表情から明るくしましょう』とお伝えしたいです。そのためにぜひ、表情筋トレーニングを活用してください」

INFORMATION

間々田佳子
19歳のときにインドに渡り「顔のヨガ」を学ぶ。その後、アルゼンチンタンゴのダンサーになり、37歳のとき顔ヨガをベースに表情筋の研究を始める。現在は表情筋研究家として、「コアフェイストレーニング」という自ら考案したメソッドの普及に取り組んでいる。テレビ・雑誌などメディア出演多数。これまでに出版した著書は合計13冊56万部を突破。講座受講者は3万人超。最新刊は『1週間後には「マイナス7歳」見ちがえる! 間々田佳子のかんたん顔筋トレ』。
URL/http://mamadayoshiko.com

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