“からだ”をつかう。<連載>

いつもの動作にちょい足し!
今日から始める「ながらトレーニング」

撮影/菅原景子 取材・文/岡林敬太
 ヘアメイク/サユリ(nude.)

おうち時間が増えたことにより、気になってくるのが運動不足。でも、体のなまりを自覚していても、ジムに通ったりジョギングを始めたりするのは億劫で…。そこでおすすめしたいのが「ながらトレーニング」。普段通りの生活の中にちょっとした動作をプラスするだけで立派な運動になる、簡単トレーニングを紹介します。

“くびれ番長”が直伝!
運動不足から抜け出す方法

コロナ禍の影響で、運動不足に陥っている人がぐんと増えています。ボディメイクトレーナーの扇田純さんによると、自粛生活で特になまりがちな体の部位は、以下の3つだとか。

① 脚
「自宅作業中心で外に出ない日々が続き、脚の筋肉を使う機会が減っています。脚の筋肉が衰えると、全身の血液循環が悪くなるほか、代謝も低下して肥満のリスクが高くなります」

② 背中
「座ったままずっとパソコンに向かっていると、背中まわりの筋肉を使わなくなります。その結果、周辺の筋肉が硬くなってしまい、肩凝り、首凝り、背中の張りなどの原因になることも」

③ お腹
「運動する際はお腹を中心に体を動かしますが、その機会が減っている今は、腹筋がなまりがち。腹筋が弱くなると、内臓機能が低下したり、姿勢が悪くなって腰痛を招いたりします」

今回「ながらトレーニング」を教えてくれるのは、元モデルで、現在はボディメイクトレーナーとして活躍する扇田純さん(別名“くびれ番長”!)。短期間で効果が出る指導に定評があり、経営するパーソナルトレーニングスタジオは予約数ヶ月待ちの人気ぶりとか。

運動不足が慢性化すると体力が落ち、ますます動く気になれないという悪循環に…。そういう人が、いきなりスポーツジムに通い始めたり、ジョギングを始めたりするのはハードルが高いかもしれません。そこで今回、扇田さんに考案してもらったのは、誰でもすぐに挑戦できる「ながらトレーニング」です。

「ながらトレーニング」とは、家事や仕事などを行いながら、そこにちょっとした動作をプラスすることによって、体を鍛える運動のこと。「いずれもいたって簡単ですが、普段あまり運動をしない人は、ちょっとやっただけで『結構動いたな』という感覚を得られるはずです。まずは下半身の運動を中心に、1日3〜5分程度から始めてみましょう!」

運動不足の人は、まず下半身(脚やお尻)の筋肉を刺激することから始めると良いそうです。「下半身には大きな筋肉が集まっていて、全身の筋肉の約7割を占めています。大きな筋肉を鍛えると基礎代謝が向上し、効果的なダイエットにつながります」。そこで今回は、下半身中心の「ながらトレーニング」を、扇田さんが特別にレクチャー!

おうち時間を利用して
なまった筋肉を刺激!

まずは自宅でできる「ながらトレーニング」から紹介。実践する前に、以下の3つのポイントをチェック! これらを意識することで、よりトレーニングの効果が高まるそう。

1:使っている部位に意識を向ける。
「なんとなく動いたときよりも、『今ここを鍛えている』と意識したときのほうが、体が目的に合わせた動きをするようになり、トレーニング効果がアップすることが科学的にも立証されているんですよ」

2:お腹を締める。
「ヨガやトレーニングの世界では、丹田(おへその少し下)に力を入れながら運動を行うと、体の軸が安定し、腰への負担も減ると言われています。お腹を少し引っ込めるイメージですね」

3:呼吸を止めない。
「呼吸で体に酸素が行き渡ることによって、エネルギー消費量が増加し、脂肪燃焼の効果が高まります。『力を込めるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸う』のが基本ですが、難しい場合はまず『呼吸を止めない』ということを意識するだけでもOKです」

それでは「ながらトレーニング」おうち編からスタート!

– おうち編 ① –
歯磨きしながらトレーニング

歯を磨いている間に加えたい動作がこれ。両足を合わせ、爪先立ちする感覚で両カカトを上げて1秒ほど静止してから、着地させる動きを繰り返します。その間、意識はふくらはぎに置くこと。また、軸がブレて前屈みにならないよう、お腹にも力を入れましょう。「ふくらはぎにある腓腹筋(ひふくきん)を鍛える運動。むくみの解消につながるほか、ふくらはぎの位置を高くすることで美脚効果も狙えます」。朝晩の歯磨きタイムの日課にすれば、脚のトレーニングを習慣化できるはず。

– おうち編 ② –
料理しながらトレーニング

調理で手が塞がっている時は、脚をゆっくり動かしてみましょう。肩幅程度に足を開き、片方の脚を外側に開いてから、元の位置に戻す運動を両脚交互に繰り返しましょう。上げているほうの脚の、お尻の側面に意識を置くことが大事。軸足を安定させるため、お腹をしっかり引き締めましょう。「お尻の側面にある中臀筋(ちゅうでんきん)を鍛える運動で、ヒップアップ効果が見込めます」。脚を上げるときに息を吐き、下ろすときに息を吸うのが基本です。

– おうち編 ③ –
掃除しながらトレーニング

掃除機をかけている間は下半身の有効活用を! 片脚を後方にゆっくり上げ、そこで1秒ほど静止させてから、元の位置へ戻す運動を両脚交互に行いましょう。「つま先を上げる」というより、「お尻から脚全体を上げる」というイメージで行うと、より効果的。「お尻の丸みを作る大臀筋(だいでんきん)を鍛える動きで、こちらもヒップアップに効果があります」。やればやるほど美尻につながると思えば、面倒なお掃除にも熱が入るはず。脚を上げたときに息を吐き、下ろすときに息を吸いましょう。

– おうち編 ④ –
テレビを見ながらトレーニング

続いては、部屋でくつろぎながら行える運動。脚を交差させて横たわり、下側の脚をつま先までピンと伸ばしたままゆっくりと上へ持ち上げ、3秒ほど静止させてから、床スレスレまで下ろします。意識する部位は、持ち上げる脚の内モモ。「内モモにある内転筋(ないてんきん)を引き締める運動で、キュッと引き締まった脚を目指せます。脚を高く上げるほど効果が高まりますが、最初のうちは低くてもOK。片脚につき1日10回程度で十分です」。脚を上げるときに息を吐き、下げるときに息を吸いましょう。

勤務中や通勤中にも
体を鍛えるチャンスが!

デスクワーク中や通勤中など、オンタイムでもできる「ながらトレーニング」もあります。こちらも「使っている部位に意識を向ける」「お腹を締める」「呼吸を止めない」ことを念頭に置きながら実践してみましょう。

– 仕事中編 ① –
PC作業しながらトレーニング

PC作業をしている間も、下半身を鍛えることができます。内モモにクッションやボールなどを挟み、それが落ちないようにするだけ。「内転筋と骨盤底筋群を引き締める効果があるので、特に女性にうれしいトレーニング。リモートミーティングの最中も、下半身は画面に映らないので実践のチャンスです」。内転筋と骨盤底筋群が緩むと、内モモがプニプニになったり、歩くときガニ股になったりしやすいそう。「内モモを締める動作を習慣化すると、普段の姿勢や歩き方が美しく変わっていきますよ」

– 仕事中編 ② –
通勤しながらトレーニング

通勤中や仕事で出かける際は、ただなんとなく歩くのではなく、内モモ同士を引き寄せ、足先をやや内側に出すことを意識しながら歩いてみましょう。「そうすることによって内転筋が鍛えられ、内モモの引き締めやO脚の矯正にも効果が見込めます。歩いている最中に左右の肩甲骨を後ろにグイッと引き寄せると、姿勢がさらに美しく見え、肩周辺の血液循環も良くなって、肩凝りの解消にもつながります」

– 仕事中編 ③ –
信号待ちしながらトレーニング

信号待ちなどで立ち止まっている間にも、実は鍛錬のチャンスが。両脚を合わせ、お尻とお腹に軽く力を入れて、背筋を真っ直ぐ伸ばす癖を身につけましょう。「これは、骨盤を正しい位置にリセットするための動きです」。現代人の多くは、骨盤が前傾した反り腰(写真中)か、骨盤が後傾した猫背(写真右)になっていて、いずれも腰痛を招きやすいのだとか。「骨盤の歪みが改善されると姿勢が美しくなるほか、血液やリンパの流れも良くなり、疲れや凝りがたまりにくい体質になります」

– おまけ –
立ち仕事のむくみ解消に!
ベッドに寝ながらトレーニング

最後は、立ち仕事で脚がむくみがちなPTRのためのメニュー。まず、仰向けの状態で両脚を合わせ、ベッドや床からわずかに浮かせて静止させます。次に、ヒザを伸ばしたまま両脚を上げ、つま先を天井に向けて1秒ほど止めてから、再び地面スレスレまで両脚を戻します。「血液は下に溜まる傾向にあるため、脚を上げることで、むくみを解消できます。トレーニング中は下腹に意識を置き、腹筋も同時に鍛えましょう」。脚を上げる際に息を吸い、下げる際に息を吐く。寝る前などに5回程度やればOK。

毎日コツコツ続けると
早ければ1週間で効果が!

全8種の「ながらトレーニング」を教えていただきましたが、効果はどれくらいの期間であらわれるのでしょうか?

「早い人だと1週間程度、遅い人でも1ヶ月程度で、『内モモが締まった』『肩凝りがラクになった』といった何らかの変化を感じ取れるはずです。体が変われば、マインドもポジティブに変わります。このトレーニングをきっかけに、これまで運動嫌いだった人が、ジョギングやジム通いに興味を持つようになるケースも珍しくありませんよ」

なまった心身を楽に活性化する「ながらトレーニング」。さっそく今日から始めてみましょう!

「ながらトレーニング」を継続するコツは、誰かと話題を共有すること。「たとえば、仲の良い同僚と同時に始めて、トレーニング状況や効果を確認し合うようにすれば、楽しく続けられると思います」。毎日のながら運動の積み重ねが、いつか扇田さんのような理想のプロポーションにつながるかも!

INFORMATION

扇田純
モデル、ヨガインストラクターを経て、ボディメイクトレーナーへ。その引き締まったプロポーションから、ついたあだ名は“くびれ番長”。2018年、東京・恵比寿に「J's Beauty Studio」をオープン。ヨガ×筋トレ×マッサージを組み合わせた独自のメソッドを考案すると、女優やモデルをはじめ申し込みが殺到。健康的で女性らしい体作り・マインド作りを得意とし、短期間でも結果の出るパーソナルトレーニングを行う。
URL/https://jun-ogida.com/
Instagram/https://www.instagram.com/jun_oogida/?hl=ja

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