おいしく“たべる”。<連載>

穫れたての海の味を知っている。

撮影/中野理  取材・文/織田真由[Roaster]

おいしく“たべる”第一弾は、宮城県の南三陸町から。訪れたのは、古くから養殖業が盛んに行われてきた戸倉地区の水戸辺漁港。東日本大震災の津波による被害の後、人々が目指したのは元に戻すだけの復興ではなく、未来まで持続可能な養殖業の新しいかたちでした。そんな人々の思いが込められた海ですくすくと育った、海の幸をいただきました。

食べ物のルーツとストーリーを知り、
“たべる”。

震災前には1000 枚以上もの養殖いかだがあり、過密状態で生育が遅くなり品質が落ち、それを補おうと新たにいかだを増やしていく……。そんな悪循環が続いていました。震災後、漁業を復興させる取り組みの一環として、いかだの数を震災前の1/3 以下に減らす改革を行い、環境に負荷をかけないかたちで再開。そして国際的な認証制度、ASC 認証(=環境と社会に配慮した国際的な養殖認証)の取得を目標に掲げました。

まずは養殖の仕組みを学ぶために、船に乗り、養殖棚があるポイントまで移動。一級品を育む、美しい南三陸の海。海と山が共存する理想的な内湾に養殖棚がずらりと並んでいます。震災後、養殖いかだの数を減らしたことで牡蠣の栄養状態が良くなり、2~3 年かかっていた養殖期間が1 年に短縮されたと船長の村岡さんは言います。水揚げし収穫されたホタテと牡蠣を村岡さんがその場で次々と捌き、いよいよ試食です。

環境が改善され、一粒一粒に栄養がたっぷりと行き渡るようになった牡蠣は大粒で濃厚。海水を多く含んでいるため、口で水を出しながら食べるのがコツだそう。甘みが強く肉厚なホタテも格別な味でした。自分たちが口にするものが、どのように育ち、どのような思いを乗せてやって来たのか。そのルーツやストーリーを知って“たべる”ことを選びたい。自分自身の身体のため、そして未来の社会のために。私たちの体験から約4 ヶ月後の2016年3 月30 日、ついに志津川湾の牡蠣養殖の努力は実を結び、国内初となるASC 認証を取得しました。

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