おいしく“たべる”。<連載>

簡単レシピで元気チャージ!
夏バテしない身体作り。

撮影/藤井由依[Roaster] 取材・文/森本亮子

じっとり、じわじわ、今年ももうすぐ梅雨と暑い夏がやってきます。クーラーの効いた部屋で冷たいものを食べたり飲んだりして過ごしていると、9月頃になって急にぐったり夏バテに……という方も多いはず。今のうちから夏バテしない健やかな身体作りを始めませんか?

スポーツやサプリもいいけれど、すぐ始められる気軽な方法といえば、食事。

中国薬膳の考えを取り入れた家庭料理が人気の料理研究家パン・ウェイ先生は、いつもハツラツと美しくてハッピーオーラ全開! その健康と美の源は、やっぱり毎日の食生活にヒントがあるようで……? パン先生、今の時期にレパートリーに加えておきたい、おいしくて元気になれる簡単レシピを教えてください!

夏に負けない身体作りは
毎日の食事から始まる

スタミナのある身体を作るために、毎日の食事は欠かせません。本格的な夏が訪れる前に、必要な栄養素をこまめに摂取し、効果的かつ長期的に夏バテ予防をおこなうことが肝心。病院に行くほどではないけれど、なんとなく調子が良くない、身体がだるい……そんな「未病」は、食べ物で予防できるとパン先生は言います。

お肌ツヤツヤ、元気ハツラツのパン・ウェイ先生。チャーミングな人柄と凛とした佇まいにあこがれて、先生の料理教室に通う人がたくさん!

「『今日の食は、5年後の身体のために食べるもの』と小さい頃から祖母に教わって育ちました。中国料理の根底にある『医食同源』とは、身体に良い食べものを日常的に食べて健やかであれば、薬は特に必要ではないという中国古来の考え方。私たちの身体は1年を通して刻々と変化していますから、気候や体調に合わせて食べものを意識的に変えていく、いわゆる食養生の知恵ですね。ちょっとしたことを知っているだけで、体調や食生活はぐんと変わるはずですよ」

「薬膳」と聞くと一見難しそうに思うけど、「カンタンカンタン、食材の選び方一つで気軽に取り入れられるんですよ!」とパン先生はにっこり。

「たとえば、ジメジメした梅雨には、体にこもった余計な熱や湿気を取り除くと言われる豆腐やキュウリ、セロリなどがおすすめ。食べものや飲みものも、できるだけ温かいものを摂取するのが理想です。夏は身体の芯に不要な熱がこもり、さらに汗をかくためミネラルが不足しがち。でも、冷たいものをやみくもに食べたり飲んだりするだけでは、身体の表面の温度が一時的に下がるだけで、余計に暑く感じてしまうこともあります。本格的な夏を迎える前の今の時期から、火照りをおさえる食材や、ミネラルを補充してくれる食材を意識的に摂りましょう。夏バテを未然に防ぐには、こまめかつ長期的な事前対策がポイントです」

というわけで、夏に負けない身体を作ってくれる2種のオリジナルレシピを、パン先生に伝授してもらいました。前菜も主菜も、簡単でとびきりおいしいんですよ!

パン先生直伝! 簡単レシピ〜前菜編〜 火照りをおさえて内臓もケア!
「キュウリの胡麻油和え」

調理時間たったの3分! 自宅にある食材と調味料ですぐに作れる、ありがたいメニュー。見た目も涼やか、夏野菜のキュウリとパクチーを使ったみずみずしい1皿です。

材料:(2人分)

  • キュウリ

    2本

  • 鶏がらスープの素

    約小さじ1/2

  • 2つまみ

  • 胡麻油

    大さじ1

  • パクチー

    1株

\ ポイント!/

夏は過酷な暑さと湿気により胃腸や肝臓が特にダメージを受けやすいシーズンです。身体の余分な熱を取ってくれるキュウリ、弱った胃腸の働きを助けるパクチー、疲れた肝機能を助ける抗酸化作用の高い胡麻油は、スタミナのある身体作りにもってこいの食材たち。

1. キュウリを一口大サイズの乱切りにする。あらかじめ皮をピーラーなどでしま模様になるように剥いておくと、味が中に入りやすいのでおいしくなり、しかもおしゃれな印象に。パクチーは食べやすいサイズにざく切りに。
2. 鶏がらスープの素、塩、胡麻油を加える。鶏がらスープはメーカーによって塩分の差が大きいので、まずは少なめに加えて、一度味を見てから微調整を。
3. 調味料が全体になじむよう箸などを使ってふんわりとよく混ぜる。味が足りなければ塩をプラスして整えれば、もう完成!

「キュウリの胡麻油和えは、香りと食感を楽しみたいメニュー。キュウリは水分が出やすいので、作ったら冷蔵庫で冷やさずすぐに食べてくださいね。中国ではここに、みじん切りのニンニクを入れるのが定番。ニンニクの香りと旨みがガツンと効いて、ヤミツキになるおいしさに! ニンニクは免疫力を高めて体力を増強してくれるので、夏風邪の予防にも効果的です。また、ナンプラーをかければ一気にエキゾティックな味わいにアレンジできます」

パン先生直伝! 簡単レシピ〜主菜編〜 スタミナ食材たっぷり!
「豆腐と豚肉のニンニクの芽炒め」

パン先生が日頃よく食べているという定番の中華メニュー。「解毒効果のあるニンニクの芽と、疲労回復につながるビタミンB群が豊富な豚肉は、滋養強壮に有効。さらに生姜は身体をぽかぽか温めてくれます。夏バテにならない食材を集めた、スタミナたっぷりの炒め物です」

材料:(2人分)

  • 木綿豆腐

    1丁(200g)

  • 豚バラ肉(焼肉用)(紹興酒または料理酒、片栗粉、各小さじ1で下味を付ける)

    150g

  • ニンニクの芽

    1束(100g)

  • 生姜(みじん切り)

    10g

  • 鶏がらスープの素

    約小さじ1

  • 醤油

    大さじ1

  • 白胡麻油(またはサラダ油)

    大さじ1・1/2

\ ポイント!/

あらかじめ具材を細かく切ることで火が通りやすくなり、時短に効果的。豚バラ肉は焼肉用を用意するか、薄切り肉を凍らせておくと細かく切りやすくなります。挽き肉は炒めると固くなるので、ふんわり柔らかめに仕上げたい今回は、豚バラ肉がおすすめ。豆腐は崩れにくい木綿豆腐を選び、水気をしっかりと切りましょう。

1. 豚肉を1cm 角のサイコロ状に切り、紹興酒(または料理酒)を加えてよく混ぜる。さらに、しっかりと水切りした木綿豆腐を1cm 角のサイコロ状にし、にんにくの芽も同じサイズに切る。
2. 1.の豚肉に片栗粉をまんべんなくまぶす。このひと手間で豚肉が調味料を吸いやすくなり、おいしく仕上がるのだとか。
3. 大さじ1/2の白胡麻油をひいたフライパンにニンニクの芽を入れる。この時点では、火はまだつけないでOK。火を入れる前にあらかじめ油と具材をフライパン上で混ぜておき、焦げ付きを防ぐ狙い。
4. 3.をよく混ぜたあと、火をつけ、強火でニンニクの芽を炒める。しっかり炒めると辛さが取れて、甘さと旨みが引き立つ。
5. ニンニクの芽の表面がシワシワになり、キツネ色の焦げ目が付き始めたらフライパンから取り出してバットに移動。一度取り出すことで火が余計に入りすぎず、ニンニクの芽ならではのコリコリとした食感がキープされる。
6. 同じフライパンに今度は大さじ1の白胡麻油を入れ、みじん切りにした生姜と混ぜ合わせてから火をつけて炒める。香りが出てきたら2.の豚肉を入れて混ぜ、その後、豆腐と鶏がらスープの素を加えてさっと炒める。
7. さらに3.のニンニクの芽を戻し、醤油を入れて混ぜ合わせる。豚肉がほぐれてバラバラになったら完成。

「スタミナ抜群、体力回復にうってつけの1品です。食欲がない時はそうめんやご飯にトッピングすると食が進みますよ。ニンニクの芽は中国では1年を通して日常的に食べられる、大定番の食材。ニンニクの芽だけ炒めてサラダの上にトッピングするのもオススメです」 腸内環境が改善されると代謝も良くなり、体調が整うので気持ちまで元気になれます」

身体を温め、タンパク質と
旬の食材を摂れば元気に!

身近な食材を組み合わせた2品の簡単レシピ教えてくれたパン先生。おいしくて元気になれるなんてうれしい限り! ほかに知っておくとよい夏バテ予防はありますか?

「暑い時期はどうしても冷たいものがほしくなりますよね。でも、身体を冷やしてしまうと免疫力を下げ、スタミナがなくなるので夏バテに繋がります。そうならないためにも、普段からできるだけ常温や温かいものを口にするように意識してみてください。中国では暑い時期でも熱いお茶を飲むんですよ。おかげで『夏バテ』という言葉は中国にありません!」

「私たちの身体を作っている大きな要素であるタンパク質を積極的に摂ることも大切。朝ごはんに温めた豆乳1杯、またはゆで卵1個を毎日食べるだけでも、元気のある身体に変わりますよ」

夏バテ対策術はまだまだある、とパン先生。「季節の食材も積極的に食べてください。おいしいだけでなく、その時期に身体に一番必要な栄養素が入っているので、旬の食材はとても理にかなっているんです」。たとえば夏場は、塩もみしたキュウリ、塩ふりトマトやスイカなどは水分とミネラルを補給できて一石二鳥。ただし、身体を冷やす食材は婦人科系の不調を引き起こしやすいため、女性は摂取するタイミングに気をつけましょう。「どうしても食べたい場合は温かい料理にしたり、生姜やニンニクなど身体を温める薬味を加えるなど工夫してみてくださいね」

自分の身体に向き合えるのは自分だけ。「今日は身体が冷えていないかな?」「最近、体力がちょっと落ちているかも?」と自分の身体の声をきちんと聞いて、いたわりながら、栄養のある食事で足りないパワーをチャージしましょう。

※このページの内容は、中国の昔からの民間療法や、年配の方から伝え聞いた話を基に構成しています。
※病気やその他の疾患に、必ず効果があることを保証する訳ではないことをご了承ください。

INFORMATION

パン・ウェイ 料理スタジオ
住所/渋谷区富ヶ谷1-49-6 代々木公園ISIハウス

中国・北京生まれの料理研究家。季節と身体をテーマに、四季に沿った食生活を提唱し、東京・代々木公園にあるおしゃれなスタジオで主宰する料理教室が大人気。NHK「きょうの料理」、NHKラジオ第1「ラジオ深夜便『おばあちゃん直伝 薬膳の知恵』」など、テレビ・ラジオ出演や著作多数。
URL/http://www.pan-chan.com

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