おいしく“たべる”。<連載>

オイルで健康!?
最近話題の「身体にいい油」とは?

撮影/菅原景子(Roaster) 取材・文/岡林敬太

「オイル=太る」なんてイメージは、もう昔のこと。最近は「健康や美容に効果的」ということで注目される存在となり、お店にもさまざまな種類の食用油が並んでいます。えごま油、アマニ油、カメリナオイル、マカダミアナッツオイル、MCTオイル……それぞれがどのように身体に良くて、どう選び、どう摂取すればいいのか。オイルコンシェルジュで、オイル美容の第一人者でもあるYUKIEさんに「身体にいい油」について教えてもらいましょう。

オメガ3を積極的に摂り、
オメガ6を控えるのがカギ

食用油の常識は、年々進化しています。昔は「油は肥満の原因になるので減らしたほうがいい」などと言われていましたが、最近では「『積極的に摂るべき油』と『摂る量を控えるべき油』、そして『なるべく摂らないほうがいい油』がある」というのが常識になっているのだとか。

しかし、その新常識を耳にしたことはあっても、いざスーパーなどに行くと、どの食用油を選んだらいいのか迷ってしまったり、買った油をどう活用すべきかわからなかったりすることも多いはず。そこで今回は、食用油との上手な付き合い方を、オイルコンシェルジュのYUKIEさんに教えてもらいます。

オイル美容界のエキスパートとしてメディアに多数出演し、食と美容の両面からオイルの活用法を紹介し続けているYUKIEさん。モデルなど美容&健康意識の高い人たちからも厚い支持を得ています。

「油(脂質)は、タンパク質や糖質と並ぶ『三大栄養素』のひとつ。その主な役割は、エネルギーとなってバテにくい身体を作ることと、身体の最小単位である細胞を作ること、そして、恒常性(ウイルスなどの外敵が身体に入ることを防いだりする働き)のバランスを整えることです。つまり、油は健康を保つために欠かせないものなのですが、油なら何を摂ってもいいというわけではありません。質のいい油を適量摂ることが大事です」とYUKIEさん。

ではまず、「積極的に摂るべき油」から教えてもらいましょう。

「それはズバリ、青魚の脂、えごま油、アマニ油など、『オメガ3脂肪酸』を豊富に含む油です」

オメガとは、脂質の主成分である脂肪酸の分類名で、オメガ3、オメガ6、オメガ7、オメガ9などの種類があり、それぞれ人体への働きが異なります。このうちオメガ3とオメガ6は免疫機能や自律神経に深く関わる重要な脂肪酸ですが、いずれも体内で作ることができない必須脂肪酸のため、食事から摂る必要があります。

「オメガ6は日々の食生活の中で無意識に多く摂取できますが、オメガ3は意識的に摂らないと欠乏しがち。昔の日本人は魚を食べることでオメガ3を十分に摂っていましたが、近年は、食の欧米化の影響で摂取量が減少。そのことが、心疾患などのリスクにつながることがわかってきました。でも現実問題、毎日のように魚を食べるのは難しいですよね。そこで活用したいのが、食用油の『オメガ3系オイル』です」

食用油はどれも複数の脂肪酸によって構成されていますが、オメガ3の含有率が最も高ければ、オメガ3系オイルと呼びます。

「えごま油、アマニ油が、オメガ3系オイルの代表格。これらを積極的に摂取すれば、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らせるだけでなく、心疾患やがんなどのリスクも下げられると言われています。また、女性ホルモンを整えたり、睡眠の質を向上させたり、目や毛髪、皮膚のバリア機能を向上させるなどの効果も見込めるのです」

なお、日本の食卓でもすっかりおなじみとなったオリーブオイルは、オメガ9系オイルに分類されます。必須脂肪酸ではないので「積極的に摂るべき油」とまでは言えませんが、便秘解消や血液浄化などに役立ちます。

自分の体重(kg)を半分に割った数字が、1日の食用油の合計摂取量(g)の適量。たとえば体重50kgの場合は、25gが目安となります。「この25gをどういった油で摂取するかがカギで、できるだけ日頃の食生活で不足しがちなオメガ3を補いたいところ。まずは『1日小さじ1杯程度』のオメガ3系オイルを毎日摂ることから始めてみましょう」。少量でも毎日続けることが大事だとか。

続いて、「摂る量を控えるべき油」とは何でしょう?

「まず、ごま油、コーン油、大豆油、綿実油など、『オメガ6脂肪酸』を多く含む油です。オメガ6も人体に欠かせないものですが、現代の日本人の食事で最も摂取機会が多く、摂りすぎの傾向にあります。オメガ6の過剰摂取は、心疾患やがんなどのリスクにもつながるとされます。なので、摂取量を控えることを意識してください。そのほか、摂る量を控えるべき油として挙げられるのは、牛脂やバターに含まれる『動物性油脂』(魚の脂身はOK)。メタボリック症候群の1番の原因は動物性油脂とされるので、意識してセーブしましょう」

では最後に、「なるべく摂らないほうがいい油」とは?

「マーガリン、ショートニングなどに含まれる『トランス脂肪酸』です。これを摂ると、心臓病などのリスクが高まります。菓子パン、レトルト食品、お菓子なども、成分表示の原材料名に『植物油脂』と記載があれば、トランス脂肪酸が含まれている可能性が高いので注意が必要です」

現代の日本人のオメガ6とオメガ3の摂取比率は、おおむね「10:1」程度だそう。「理想的には、これを『2:1』に近づけたいですね。肉食を減らして魚中心の食生活にする、普段の食事にオメガ3系オイルをちょい足しする、などの方法で摂取バランスを整えていきましょう。1日単位でバランスを調整するのは難しいため、『先週はオメガ6を摂る機会が多かったので、今週はオメガ3を増やそう』といった具合に、1週間単位でざっくり調整すればOKです」

小さじ1杯で身体が変わる!?
おすすめ食用油5選

オメガ3系を中心とする「おすすめのオイル5種」をYUKIEさんに選んでもらいました。それぞれの特徴と効能を紹介します。

① えごま油
「近ごろ話題のオメガ3系オイル。オメガ3の代表的な脂肪酸『α-リノレン酸』を豊富に含むため、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などの生活習慣病の予防に有効と言われています。また、炎症を緩和させるルテオリン、ロスマリン酸も含まれているため、アレルギー症や花粉症でお悩みの方にもピッタリ。酸化しやすい油なので、冷蔵保存してください。また加熱して高温になると、有効成分が壊れてしまうばかりか、トランス脂肪酸が発生するので、揚げ物や炒め物には向きません」

② アマニ油
「こちらもオメガ3系オイルの代表格。高含有のα-リノレン酸は生活習慣病の予防に有効的であるほか、脂肪の燃焼を促進するため、ダイエット効果も見込めます。また、アマニに含まれるリグナンという成分には女性ホルモンを整える役割があり、肌や髪に潤いを与えたり、更年期障害を緩和する効果も期待できます。えごま油同様、要冷蔵保存で、加熱使用は避けましょう」

③ カメリナオイル
「オメガ3とオメガ9をほぼ同量含有している植物油。オメガ9に属するイコセン酸の働きにより、動脈硬化や認知症の予防にも良いとされます。えごま油とアマニ油は熱に弱く冷蔵保存が必須ですが、カメリナオイルは加熱しても大丈夫で、開封後も常温保存が可能な点が強みです」
※含有脂肪酸の割合は、品種により若干異なります。

YUKIEさんおすすめの、えごま油、アマニ油、マカデミアナッツオイル、MCTオイル、カメリナオイル(左から順に)。「植物油は基本的に光と熱に弱く、酸化しやすいため、遮光ボトルに入った商品を選ぶとよいです」。ただし、MCTオイルは酸化しづらいので、遮光ボトルでなくてもOK。

オメガ3系以外にも、身体にいいオイルがあります。YUKIEさんのおすすめは以下の2つ。

④ マカダミアナッツオイル
「オメガ9系オイルですが、オメガ7も豊富。糖質ゼロなのにほんのり甘い味と香りがすることで人気があり、健康効果も大きいです。オメガ7系に属するパルミトレイン酸には血管を強くする働きがあり、脳卒中や高血圧の予防に有効的。また、パルミトレイン酸は糖尿病の予防や、肌のアンチエイジングにも効果あり。熱や酸化に強く、常温保存でも大丈夫なオイルです」

⑤ MCTオイル
「MCTオイルとは、ココナッツやパームといったヤシ科の果実の種から抽出される中鎖脂肪酸(ラウリン酸・カプリル酸・カプリン酸)のみで構成されているオイルのこと。一般的な油よりもすばやく消化・吸収され、すぐにエネルギーになりやすい特徴があるため、スポーツをする人やダイエット中の人に人気。酸化しづらい性質なので、常温保存も可能です」

酸化した食用油は、味が劣化し、有効成分が身体に吸収されにくくなるほか、下痢、胸焼け、動脈硬化などの原因になることも。「なので、オメガ3系オイルはなるべく開封後1ヶ月以内、そのほかのオイルも開封後2〜3ヶ月以内に使い切ることを心がけましょう」

オイル習慣継続のコツは、
毎日摂る食材に合わせること

身体にいい油を、簡単かつ美味しく摂取する方法を教えてもらいました。

「オメガ3系オイルは味に少しクセがあるので、そのまま単体で摂るよりも、食材と掛け合わせたほうが摂りやすいです。日々摂取するのが理想なので、毎日食べるものに合わせるのがベスト。特に発酵食品と一緒にオメガ3を摂ると腸内環境がよくなり、免疫機能をサポートできるので、納豆やキムチに合わせるのがおすすめです。たとえば朝食の納豆1パックに、小さじ1杯程度のオイルをかければ、その日の摂取目標は達成ですね」

「えごま油やアマニ油は少し草っぽいエグ味があるため、納豆や青菜のおひたしなど、クセや苦味のある食材と合わせると摂取しやすくなります」。そのほか、野菜ジュースに入れて飲む人も多いそう。エグ味が気にならないなら、ドレッシング代わりにサラダにかけるのもよいでしょう。
「カメリナオイルは長ネギのような風味が特徴のため、和食や中華に合います。刻みネギをトッピングする感覚で、豆腐や味噌汁にかけて召し上がる方が多いですね」。加熱しても大丈夫なので、卵焼きの調理などにも使えます。

乳製品にはマカダミアオイル、
ドリンクにはMCTオイルを

マカダミアナッツオイルとMCTオイルは、どう使うのがよいのでしょうか?

「マカダミアナッツオイルは加熱料理にも使えますが、ナッツの風味を楽しみたいなら、そのまま摂るのがおすすめ。特に乳製品と合わせると美味しいです。また、MCTオイルは、ほぼ無味無臭のさっぱりとした油なので、コーヒーにプラスしたり、ドレッシングやソースに混ぜたりと、使い道は豊富。加熱すると煙や泡が出やすいので、生のまま使ったほうがよいです」

マガダミアナッツオイルは、牛乳、チーズ、バニラアイスなど乳製品との相性が抜群。「ヨーグルトにグラノーラをまぶし、そこにマカダミアナッツオイルを少量かけると、ちょっぴり南国風のヘルシーなデザートが完成します」
「MCTオイルは透明でクセがなくサラサラしているため、コーヒーとの相性もバッチリ。味噌汁に入れても、豚汁風のコクが出て美味しいですよ」。酢、レモン汁、豆腐、卵などと和えて、自家製のマヨネーズを作る人も多いとか。

コロナ禍の今だからこそ
食習慣を変えるチャンス!

身体にいい油は、習慣的に摂り続けることが大事だそうです。

「長続きの秘訣は、自分が『美味しい』と感じるオイルを選ぶこと。オメガ3系にも、えごま油やアマニ油などの種類があり、また、同じえごま油でもメーカーによって味がまったく異なったりするので、いろんな油をテイスティングして、自分好みのものを探してみましょう」

毎日摂り続けると、どれくらいで効果があらわれるのでしょう?

「3ヶ月程度で身体の変化を感じられると思います。というのも、体全体の細胞が生まれ変わるのに、2〜3ヶ月かかるからです。たとえば花粉症予防を期待したい場合、今から摂り始めて、数ヶ月後の秋口の花粉症に備えるという感じですね」

身体にいい油はスーパーやネットでも買えますが、テイスティングをしながら商品を決めたいなら、YUKIEさんが代表を務めるオイルのセレクトショップ「O.I.L. FARMACY(https://www.oil-farmacy.com)」を訪れてみては? 経験豊富なオイルソムリエがアドバイスもしてくれます。

「1日に必要なオイルはさほど多くはないので、少々高価なものを選んだとしても、サプリメントよりもリーズナブルに健康効果を得られると思います。良質なオイルで細胞を育てていくと、自分の身体がどんどん愛おしくなっていきますよ」とYUKIEさん。

外食自粛で自炊することも増えた今はまさに、自分の身体に入れる食材を見直すチャンス。まずは、身体にいい油を取り入れることから始めてみませんか?

INFORMATION

YUKIE
美容オイルコンシェルジュ。米国医学博士のもと、オイルセラピストとしての基礎を習得し、日本人初のオイルセラピストに。一般社団法人日本オイル美容協会の代表理事を務め、オイル業界のエキスパートとして、効果的なオイル美容の普及に尽力。
URL/https://www.oil-biyou.jp(日本オイル美容協会)

「O.I.L. FARMACY」
住所:東京都渋谷区恵比寿4-20-4 恵比寿ガーデンプレイス グラススクエアB1F PORTAL POINTエリア内 TEL :03-6427-3982
※来店はhttps://www.oil-farmacy.comより予約制

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