おいしく“たべる”。<連載>

話題のヨーグルト研究家に聞く、
体が喜ぶ美味しい“菌活”

撮影/菅原景子 取材・文/岡林敬太

「体にいい」と言われるヨーグルトですが、いろんなタイプの商品があり、実はそれぞれ含まれている菌が違うことをご存知でしょうか? 味や値段でヨーグルトを選ぶのもいいけれど、商品ごとの効果を理解した上でうまく取り入れれば、日々の「菌活」がさらに楽しくなるはず。そこで今回はヨーグルトの専門家に、自分に合った商品を選ぶコツや、ヨーグルトを使った簡単アレンジなどを教えてもらいます。

腸内環境を整えて
免疫機能もアップ!

最近、ヨーグルトがますますブームになりつつあります。「健康志向が増す中でヨーグルトの人気は上昇傾向にありましたが、コロナ禍で免疫に対する意識が高まったことにより、この2年は特に注目度が増しているようです」と語るのは、ヨーグルト研究家の花映さん。

スーパーの棚にはさまざまな種類のヨーグルトがズラリと並び、新商品も続々と登場中。しかし、いざ購入するとなると、結局「いつもと同じもの」を選ぶ人が多いようです。

「もちろんそれでもOKなのですが、せっかくバラエティ豊富なヨーグルトが出そろっているので、自分に合うものを探してみるのも楽しいですよ。『ヨーグルトはどれも同じ』と思っている方も多いかもしれませんが、実は商品ごとに菌の種類は異なります。そして、味や食感はもちろんのこと、健康効果も違うんですよ」

知れば知るほど奥が深いヨーグルトの世界を、花映さんに案内してもらいましょう。

昨年、テレビ番組「マツコの知らない世界」に出演し、溢れんばかりのヨーグルト愛でマツコデラックスさんをも驚かせた花映さん。会社勤めの傍らヨーグルト専門店「Dear Mechnikov(ディア・メチニコフ)」を立ち上げ、毎週3キロ(!)ものヨーグルトを食べているそう。

そもそもヨーグルトとは、どのような食べ物を指しますか?

「牛乳などの『乳(ミルク)』に、乳酸菌や酵母といった微生物を加えて発酵させた発酵食品です。牛乳をただ飲むよりも、乳を発酵させることによりタンパク質やカルシウムなどの栄養が消化吸収されやすい形になっています。また、ヨーグルトを発酵させる菌は、腸内の善玉菌(体に良い働きをする細菌)のエサとなったり、体に有効な物質を作り出すため、健康にいい食べ物として知られています」

最近よく耳にする「菌活」という言葉。体に有用な菌を積極的に食事から取り入れたり、腸内で育てたりして、腸内環境を整えることを指しますが、ヨーグルトは菌活に適しているということでしょうか?

「まさにぴったりの食べ物です。ヨーグルトに含まれる菌は、大きく乳酸菌とビフィズス菌の2種に分けられますが、その主な働きは、『整腸効果』と『免疫機能を上げる効果』。乳酸菌とビフィズス菌は、腸内の悪玉菌を抑え、腸のぜん動運動を促してくれます。その結果、便秘や下痢が解消され、美肌にも繋がるとされています。さらに、免疫機能を強めてインフルエンザなどの感染症への抵抗力を高めることも期待されています」

現在さまざまなタイプのヨーグルトが出回っていますが、どんな商品でも共通してこの「整腸効果」と「免疫機能を上げる効果」は備えているそう。

乳酸菌とビフィズス菌は、腸内環境を整える善玉菌の代表格。働きは似ていますが、学術的には違う菌。乳酸菌は主に小腸に働くのに対して、ビフィズス菌は大腸に住みついて活動します。

菌の世界の奥深さを知るために、乳酸菌を例にもう少しだけ話を進めましょう。乳酸菌にはブルガリア菌、サーモフィルス菌など380以上の種類がありますが、その380以上の種類もさらに細かく「株」に分類されます。これら株まで含めると、その数なんと10万種以上! 「たとえば『R-1乳酸菌』は、ブルガリア菌の中の『株』の一種です。同じブルガリア菌でも、株が異なれば効果も変わるんですよ」

菌のカテゴリーを動物界にたとえるなら、乳酸菌が「犬」で、ブルガリア菌が「トイプードル」のような「犬種」にあたり、株は「ハチ公」といった「個体」のようなもの。株は特許申請され、そのまま商品名になることもあるそうです。

「菌の種類は現在、全体の数%程度しか見つかっていないと言われていて、まだまだ宝がたくさん眠っている状態。メーカー各社がしのぎを削って未発見の菌を探し、それらの効能・効果を日々研究しています」

あなたはどれが好み?
市販ヨーグルトの4タイプ

花映さんによると、市販されているヨーグルトは、主に以下の4タイプに分類されるそうです。

①プレーンヨーグルト
「『プレーン=無糖』と捉える人も多いですが、そうとは限りません。『プレーン=具が入っていない』とするメーカーもあるため、加糖のプレーンも存在します。カロリーを抑えたい場合は、『砂糖不使用』をうたったものや、原材料名に『砂糖』などの表示がないものを選びましょう」

②機能性ヨーグルト
「一般的なヨーグルトに、なんらかの機能性をプラスした商品のこと。ヨーグルトが本来持つ整腸作用や免疫機能アップ効果に加え、さらに健康に対して特定の効能が期待できるものを指します。独自の効果をPRするべく、パッケージの表面に『血圧が高めな人に』『内臓脂肪を減らす』などと書かれていることが多いです」

③デザートヨーグルト
「食後にデザート感覚で食べるようなヨーグルト。刻んだフルーツや、コンフィチュール、ジャムなどが入っています。甘いものが多いですが、菌の効果に変わりはありません」

④ギリシャヨーグルト
「ヨーグルトを水切りしたタイプで、乳成分が濃縮されているためタンパク質が豊富。まったりとした酸味の少ない味わいが特徴です。パッケージの目立つところに『ギリシャ』『水切り』『濃厚』などと記してあります」

ギリシャヨーグルトは濃縮させることによって高タンパクになっているため、ボディトレーニング中の方にもおすすめ。脂肪ゼロのものを選べば脂質カットもでき、糖質も比較的少なめです。

お悩みや希望に合わせて
パッケージをチェック

ヨーグルトはどんなものでも「整腸効果」と「免疫機能を上げる効果」を備えていますが、それに加えて、前述の「機能性ヨーグルト」のように特定の症状に強さを発揮する商品もあります。あなたのお悩みを解決してくれるかもしれない菌や素材の名前を覚えておきましょう。これらはパッケージに記載されていることが多いので要チェック。

●便秘でお悩みなら…
「どんなヨーグルトでも整腸効果はありますが、特におすすめは、生きたまま腸に届く力が強いビフィズス菌『BE80菌』が入っているもの。あとは、水溶性食物繊維の『イヌリン』や、乳糖から作られるオリゴ糖である『ラクチュロース』がプラスされたヨーグルトを選んでみてはいかがでしょう。ともに善玉菌のエサになったり、便に水分を与えて出しやすくしてくれるので、便通改善が見込めます」

●肌荒れでお悩みなら…
「『SC-2乳酸菌』や、『コエンザイムQ10』が入ったヨーグルトをお試しください。細胞のダメージを修復して本来の働きを高めるとされているため、美肌効果が期待できます」

●免疫機能をさらにアップしたいなら…
「インフルエンザ予防に効果的な『R-1乳酸菌』や、免疫の司令塔を活性化する『プラズマ乳酸菌』を含んだヨーグルトがおすすめです」

ヨーグルト習慣を続けている花映さんが感じる健康効果は? 「私は会社員とヨーグルト研究家の二足のわらじで働いていますが、ハードスケジュールでも体調を崩すことがほぼありません。また、食事中にヨーグルトを摂ると血糖値の上昇がゆるやかになるので、食後独特のダルさを感じず、すぐに集中して仕事に移れています」

ヨーグルトの摂取量の目安や、摂取に適したタイミングも教えてもらいました。

「1日100〜200グラムが適量で、それを毎日摂り続けることが大事。タイミングは食べたいときでOKです。ヨーグルトって朝に食べるイメージが強いでしょうが、実は夜(夕食時や就寝の3時間以上前)もおすすめです。1日で最も腸が活発に動くのは、夜10時から翌2時まで。つまり夕食時などにヨーグルトを食べると、この『腸のゴールデンタイム』に乳酸菌を送り込むことができ、より効果的な働きが期待できます。また、ヨーグルトに含まれるカルシウムが安眠効果ももたらしてくれますよ」

温度に関して注意事項は?

「ヨーグルトを熱すると乳酸菌などは死にますが、もし死んでも腸内の善玉菌のエサとして有益なため、効果はそんなに変わりません。凍らせても効能は落ちませんので、季節や好みに合わせて自由に温度調節して楽しんでください」

健康効果が出るまでに、どの程度の期間がかかるのでしょう?

「効果が感じられるまでには、2週間ほどかかる場合が多いです。機能性ヨーグルトなら3日ほどで効果が出始めることもあります」

美味しく食べて効果も◎!
3つのおすすめの合わせ技

ヨーグルトは毎日摂り続けることが大事ですが、単体だと飽きてしまう人もいるかもしれません。そこで紹介したいのが、花映さんおすすめの食べ合わせ。ヨーグルトに他の食材を掛け合わせると、意外な美味しさや更なる健康効果が生まれるそうです。

まずは、あんこ+ヨーグルト。あんこの小豆に含まれるレジスタントスターチが腸内の善玉菌のエサになり、乳酸菌やビフィズス菌との相乗効果が生まれます。味わいは、甘味と酸味が混ざり合った新感覚のデザートといった感じ。粒あん、こしあん、どちらでも美味しく仕上がります。分量の比率はお好みで。
続いては、生姜&ハチミツ+ヨーグルト。生姜をすりおろしてレンジで温め、ハチミツと一緒にヨーグルトに入れます。生姜には体温を上げたり免疫機能を高めたりする働きがあるので、同じく免疫機能を向上させるヨーグルトと組み合わせることで効果アップが狙えます。また、ハチミツのオリゴ糖が腸内の善玉菌のエサにもなるので菌活にも最適。プレーンヨーグルトを使うのがおすすめです。
最後は、キムチ+ヨーグルト。水切りしたヨーグルト(もしくはギリシャヨーグルト)とキムチを一緒に食べます。ヨーグルトがキムチの辛さをまろやかにしてくれ、またキムチにも乳酸菌が多く含まれているため、両者の乳酸菌をダブルで摂取できます。お酒のおつまみやおかずにもなるし、トーストにのせても美味しいです。

味噌汁のコクにもなり
凍らせばデザートにも!

ヨーグルトをそのまま食べるのではなく、料理の隠し味として、あるいはデザートの材料として使うこともできるそう。簡単かつとても美味しいので、さっそく試してみましょう。

味噌汁1人分に対し、大さじ1杯程度のドリンクタイプのヨーグルトをかけて、かき混ぜてみましょう。ヨーグルトには旨味成分もあるので、出汁のような感覚でプラスすればコクもアップ。
最後に紹介するのは、暑い季節にもぴったりなフローズンデザート「ヨーグルトバーク」。作り方は簡単。ハチミツを適量混ぜた水切りヨーグルト(もしくはギリシャヨーグルト)をバットに流し、好きなフルーツやグラノーラをのせてからラップをし、数時間冷凍させます。
冷凍庫から出したら、ラフに手で割るだけで見映えも十分。水切りしたヨーグルトを使うため、冷凍してもかちかちに硬くはならず、出してすぐに割って食べられます。ザクザクと割った形が木の皮(バーク)に似ていることから「ヨーグルトバーク」と呼ばれるようになったとか。

楽しみながら食べる。
それが習慣化のコツ

ヨーグルトには多くの種類があり、味わい方も多様です。そこに含まれているさまざまな乳酸菌やビフィズス菌は、いわば身体の中にいる“兵隊”のようなもの。だからなるべく多様な種類の菌を取り込んで、いろんな悪因と戦える準備をしておくのが理想的とされています。

「とはいえ『あれも摂らなきゃ、これも摂らなきゃ』と必死になると、ヨーグルト習慣は挫折しがちなので、自分に合うもの・好みのものを探すような感覚で、色々と試しながら毎日摂り続けるのがいいと思います。実は食事から摂った乳酸菌やビフィズス菌は定着しづらく、数日で排出されてしまいます。だからこそ、絶えず取り入れることが大事なんです」

「乳酸菌やビフィズス菌は今後も新たな種類や株が見つかる可能性が高く、ヨーグルトの機能性ももっと多様になっていくと思います。今後ますます、自分に合ったヨーグルトを選ぶ時代になるかもしれませんね」

ヨーグルト習慣を続けるコツは、何より「美味しく食べること」。今回の記事を参考に、普段とはちょっと違う種類を食べてみたり、新しい食べ合わせを試してみたりすると、好みがだんだんわかってくるかも。「健康のため」と力むことなく、まずは楽しみながら自分に合うヨーグルトを探してみましょう!

INFORMATION

花映
夜食でヨーグルトを食べ続けていた中学時代にその美味しさに目覚め、「将来はヨーグルト専門店を開きたい」と夢見る。東京農業大学卒業後、食品添加物メーカーに就職。その後、カスタムサラダ専門店に転職し、会社員として働きながら念願だったヨーグルト専門店「Dear Mechnikov(ディア・メチニコフ)」を2016年にオープン。月に1〜2度だけ開店するというユニークな営業形態でも注目を集める。ヨーグルト研究家として、セミナーの実施やメディア出演なども多数行う。
URL/https://www.instagram.com/hanae_yogurt/(Instagram)

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