おいしく“たべる”。<連載>

アレンジ自在のヘルシー食材、
「オートミール」入門

撮影/菅原景子 取材・文/岡林敬太

皆さんはオートミールを食べたことがありますか? 欧米では昔から朝食の定番とされていますが、日本でもここ最近、栄養価が高く健康にいい食材として流行中。「興味はあるけれど、どういう食べ物なのかイマイチわからない」というビギナーのために、今回はオートミールの基礎知識と、誰でも簡単に作れる美味しいレシピをご紹介。さっそく今日から始めてみましょう!

食物繊維の含有量は
1食あたり白米の約6倍!

健康食として注目を集めているオートミール。最近はスーパーなどでの取り扱いも増えましたが、売り切れるお店が続出しているとのウワサ。どうしてこんなに人気が高まったのか? 食べるとどんないいことがあるのか? そもそもどうやって食べるのか? 料理研究家の牛尾理恵さんにあれこれ教えてもらいましょう。

牛尾さん自身も数年前、オートミールを取り入れた食生活&筋トレを中心とする運動で、約10キロのダイエットに成功。以来、その体形をキープし続けているそう。

そもそもオートミールとは、どんな食べ物なのでしょう?

「オーツ麦(燕麦)を脱穀して調理しやすく加工したシリアル食品のことで、欧米では古くから主に朝食として親しまれています。穀類の中で栄養価はトップクラスで、食物繊維、ビタミンB群、鉄分、カルシウム、ミネラル、植物性たんぱく質などが豊富に含まれています」

中でも特筆すべきは食物繊維。なんと、1食あたり白米の約6倍もの量(※1食あたりの目安を、オートミール約30g、白米茶碗1杯約150gと想定した場合)が含まれているそうです。

「オートミールの食物繊維には、便と一緒に老廃物の排出を促す『不溶性食物繊維』と、腸内の善玉菌を増やす『水溶性食物繊維』がバランスよく含まれているので、便秘解消や腸内環境の改善に役立ちます。また、穀類(炭水化物)ではありますが、白米や玄米よりも糖質が少なく、血糖値の上昇や消化・吸収が緩やかな『低GI食品』に該当するため、太りにくく、腹持ちがいいのが特長。つまり、ダイエット食としても最適なんです」

オートミールは「クイックオーツ(インスタントオーツ)」(写真左)と、「ロールドオーツ」(右)の2種類に大別されます。「ロールドオーツは脱穀して蒸したオーツ麦を平たく伸ばし、乾燥させたもの。クイックオーツはロールドオーツを食べやすいようさらに砕いたもの。日本のスーパーなどで売られているものの多くはクイックオーツです」

食物繊維はもちろん、その他の栄養素の含有量も、白米と比べてこれだけ豊富!

「筋肉を作るたんぱく質が約1.5倍、美肌にも役立つ鉄分が約6倍、糖質の代謝を促すビタミンB1が約2倍、骨を丈夫にするカルシウムが約3倍…といった具合(※1食あたりの目安を、オートミール約30g、白米茶碗1杯約150gと想定した場合)。こうした万能な健康効果がSNSなどで話題になったことをきっかけに、昨年あたりから日本でもオートミールが一気に流行り始めました。ちなみに、オーツ麦と水を原材料として作られたものが『オーツミルク』で、こちらも最近の健康志向からコーヒーのお供などとして人気上昇中です」

牛尾さんはブームになる前から日常的にオートミール食を取り入れていて、その効果を体感しているそう。「オートミールを食べた翌日のお通じは、明らかに調子がいいです。あと、少量でも腹持ちがよく、栄養価も高いので、筋トレの前などに食べても体が重く感じられず、スタミナ切れも起きにくいです」

牛尾さんも絶賛するオートミール。そのおすすめレシピを教えてもらいましょう。

クセがないから何にでも合う!
オートミールを使ったレシピ集

ここからはいよいよ、多種多彩な食べ方の紹介です。「欧米では牛乳と合わせて温め、砂糖で味付けするのが昔から定番の食べ方ですが、実はその他にも、さまざまな楽しみ方ができるんです。というのも、オートミールは味にクセがない。だからアレンジ自在で、誰でも簡単にヘルシーレシピを作れるんですよ」と牛尾さん。

– 簡単レシピ ① –
この一皿で元気な1日をスタート!
「オーバーナイトオーツ」

「最近人気なのが、オートミールをヨーグルトや牛乳などと合わせて一晩置いておき、柔らかく戻した『オーバーナイトオーツ』。一晩置くことでとろみのある滑らかな食感になり、また夜に仕込んでおけば、翌朝すぐに食べられる手軽さも魅力です。仕上げにフルーツやナッツなどをトッピングすれば、自分好みのスイーツメニューに早変わり!」

プレーンヨーグルト(100g)、牛乳(1/2カップ)、クイックオーツ(40g)を合わせて冷蔵庫で一晩置く。翌朝、輪切りにしたバナナ(1/2本)、砕いたクルミなどのナッツ類(15g)をのせ、シナモンパウダー(適量)、はちみつ(大さじ1)をかけるだけ。
一晩おいたオートミールは、とろっと柔らかい舌触り。バナナやハチミツの自然な甘さと、シナモンの香りが溶け合って、さっぱりとしたデザートのような仕上がりに。「ナッツ類を加えると食感のアクセントになります。シナモンパウダーを、ココアパウダーに代えるのもおすすめです」

オートミールがお米風に!?
話題の「米化」をお試しあれ

「牛乳と混ざったときのねとっとした食感が苦手」という人は、オ―トミールの「米化」を試してみてはいかが? 米化とは、オートミールをお米の代わりに主食としてアレンジすること。お米より少ない量で満足できる上、低糖質なのでダイエット志向の人の間で近ごろ話題です。

「オートミールを雑炊やおかゆ風に仕立てるご飯系レシピなら、日本人にも馴染みがあってより美味しく感じられると思います。炊飯器などで炊く必要がないので、忙しい現代人にも合っていますね」

– 簡単レシピ ② –
野菜やたんぱく質も一緒に摂取!
「オートミール雑炊」

野菜やたんぱく質も併せて摂りやすいのが、雑炊アレンジ。1cm幅に刻んだニラ(20g)、えのきだけ(30g)、麺つゆ3倍濃縮タイプ(大さじ1/2)、水(300ml)、塩(ふたつまみ)に、クイックオーツ(30g)を合わせて3分ほど煮て、溶き卵(1個)を加え半熟状になるまで火を通す。最後にお好みで刻みのり(適量)を散らせば完成。電子レンジで作る場合は、材料をすべて合わせて600wで3分加熱を。
だしの旨みを吸い込んだオートミールと、卵の優しい味わいが溶け合った素朴な美味しさ。火を通すことによって中まで水分が含まれたオートミールは、ふっくらもちもち。「少量でも満腹感があるし腹持ちもいいので、小腹が空いたときや夜食にも最適です」

– 簡単レシピ ③ –
ロールドオーツが手に入ったらトライ!
「オートミール炊き込みご飯」

ロールドオーツが手に入ったら、電子レンジで作る炊き込みご飯風をお試しあれ。ロールドオーツ(30g)、鶏ひき肉(50g)、輪切りにしたちくわ(30g)、薄切りにした椎茸(1枚)、細切りにした人参(20g)、ざく切りにした切り昆布(20g)、しょうゆ(小さじ2)、みりん(小さじ2)、塩(ひとつまみ)を耐熱ボウルに入れて混ぜ、ラップをして電子レンジ600wで3分加熱。取り出して、余分な蒸気を飛ばすようにしながらよく混ぜ合わせたらもう完成です。ロールドオーツ特有の粒感が残っているため噛み応え十分。味は普通の炊き込みご飯と変わりません。冷めても美味しいので、お弁当にもぴったり。ちなみに、粒感は減りますが、クイックオーツで作ってもOK。

もっと簡単に済ませたいなら
「〜するだけ」レシピを!

帰宅が遅く深夜に食事をする場合や、忙しくて時間がないときには、さらに簡単に作れるレシピが活躍します。

– 簡単レシピ ④ –
インスタントスープと合わせるだけ!
「オートミールリゾット」

できるだけ簡単に済ませたいなら、インスタントのスープと合わせるだけでもOK。インスタントのミネストローネ(1杯分)とクイックオーツ(30g)を鍋に入れて3分ほど温める。器に盛り、粉チーズをふる。最後にお好みでドライパセリをちらせば完成。「合わせるスープを変えるだけで、和風、中華風、洋風と、いろいろアレンジが楽しめます」

– 簡単レシピ ⑤ –
お湯を注いで具をトッピングするだけ!
「オートミール茶漬け」

お湯を注いで好みの具をトッピングするだけの簡単レシピ。器にクイックオーツ(30g)、昆布茶(小さじ1/3)、お湯(250ml)を注いでラップ(または蓋)をする。2~3分ほど置いたら、梅干し(1個)、かいわれ大根(5g)、塩昆布(2g)をのせるだけで、おかゆのような優しい味わいに。食欲のない日も、これならさらっと食べられそう。寒い日の朝ごはんや夜食にもぴったり。

1食あたり30〜40gを目安に
1日に1食を続けるのが理想

最後に、オートミールを食べる際の注意点を教えてもらいました。

「何の食材でもそうですが、体にいいからといってそればかりを食べるような偏った食生活はよくありません。オートミールは食物繊維が豊富ですが、食物繊維も摂りすぎると逆に便秘になったり下痢になったりすることもあります。1日1食程度、30~40gを目安に食べるだけで、十分に健康効果を感じられると思います。それぞれの生活リズムに合わせて、まずは3食のうち1食をオートミールに置き換えてみるのはいかがでしょう?」

腹持ちがよいので、間食を減らしたい人は、朝食や昼食に食べるのがおすすめだとか。「毎日食べるのが難しい場合は、週に数回、気が向いたタイミングでトライするのでもOK。気負わず気軽に始めてみてください」

調理がラクで、美味しくて、健康にもいいオートミール。あなたの食生活にもさっそく取り入れてみませんか?

牛尾さんが今年7月に出版した「オートミールヘルシー&ダイエットレシピ」(主婦の友社)には、さらにバラエティ豊富な調理法が掲載されています。

INFORMATION

牛尾理恵
料理研究家、栄養士、フードコーディネーター。病院での食事指導、料理専門の制作会社などを経て独立。手軽に作れて、美味しくて、痩せやすいレシピに定評あり。著書に「おいしく食べて美やせ体質になる!高たんぱく質の絶品おかず」(扶桑社ムック)、「究極ずぼらウマいレシピ」(朝日新聞出版)など多数。趣味は筋トレ、トレイルランニング、クライミング、ヨガとアクティブ!
URL(Instagram)/https://www.instagram.com/rieushio/?hl=ja

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