おいしく“たべる”。<連載>

身体が喜ぶ、冬の薬膳鍋。Part.1

免疫力を高める豚団子の五色鍋。

撮影/有坂政晴[STUH] イラスト/森絵麻 取材・文/赤木百[Roaster]

冬のはじまり。だんだんと寒さが増すこの時期は、熱々のお鍋をみんなで囲みたくなります。好みの出汁やスープで具材を煮るだけで簡単に出来るお鍋ですが、せっかく作るのならもっと身体のことを考えたレシピに挑戦してみたい。そこで今回は、季節に沿った身体に優しい食生活を提唱する料理研究家パン・ウェイ先生を尋ね、中国家庭薬膳の知恵を取り入れた簡単なお鍋のレシピを教えてもらいました。

パン・ウェイさん

パン・ウェイ先生は「今日の食事は5年後の身体のために」をモットーに、家庭薬膳の料理教室を主催されています。薬膳とは中国の薬食同源の考えから生まれた、健康保持を目的とした食事のこと。

「薬膳は、漢方の原料となる生薬を使うものと、使わないものの二種類があります。生薬を使うものは病気を治す薬膳。そちらのイメージの方が強いので、大半の方が薬膳というと『匂いが強い』『食べにくい』っておっしゃる。でも私が教えているのは家庭薬膳といって、未病(病気ではないが体調が悪い、または放っておくと大病を引き起こす状態)を防ぐ薬膳ですね。生薬はいっさい使わず、食材の効能を上手く組み合わせて食べることを大切にしています。ですので、生薬特有の匂いがなくて食べやすい。家庭薬膳で大事なのはまず絶対に美味しいことと、季節に合ったものを食べることなんですね」

季節に合った材料で作る、簡単で美味しいお鍋のレシピ。今回は、免疫力が高まる豚団子の五色鍋(Part.1)と美肌を作る手羽鍋(Part.2)の作り方を教わりつつ、中国薬膳の考え方についてお話を伺いました。

身体と繋がる
5色の食べ物と5つの季節。

「奥が深い薬膳の世界ですが、まず一番重要なのは一日に5つの色(緑・赤・黄・白・黒)のものを食べること。緑は肝臓、赤は心臓、黄色は消化系・粘膜、白は肺、黒は腎臓に働きかけます。また、日本の場合は四季と言いますが、薬膳の考え方では本来もう 一つ、土用という季節があります。土用は年に4回、立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間のことです」

薬膳では、それぞれの季節で気候等の変化によって弱くなる臓器があり、その臓器に働きかける色の食べ物を食べると未病を防ぐ効果があると考えられているそう。1日5色を食べることを心がけながら、季節や体調に合わせて、色のバランスを整えることが大切です。

「日本の場合は、夏と秋の間の土用をすごく大事にしますね。いちばん体がしんどい時期だからです。土用は季節の変わり目ですから、胃などの粘膜が弱くなるんです。だから胃に栄養を与える黄色いものを多めに食べること。これが薬膳の基本の考え方です」

11月7日の立冬が過ぎると来年(2017年)2月4日の立春まで、腎臓が弱りやすい冬の季節に入ります。

「冬は腎臓に働きかける黒い食材の時期なので、キノコ類を多めに食べるといいです。あと海藻類と、野菜だとゴボウ。冬の間は是非毎日食べていただきたいですね」

身体と繋がる5色の考え方を踏まえて、今回最初に教えていただいたのは「豚団子の五色鍋」。5色の食材を1食で摂れ、免疫力を高めるお鍋のレシピです。

豚団子の五色鍋

材料:(2人分)

  • 団子:豚肉(焼肉用)
    150g
  • A
    にんにく(微塵切り)
    紹興酒
    胡椒
    片栗粉
    鶏スープの素
    小さじ2
    大さじ2
    3つまみ
    大さじ1/2
    小さじ1/2
  • 長葱(斜め切り)
    10cm
  • 生姜(皮付きのままスライス)
    50g
  • カボチャ(幅8mmの一口大に切る)
    150g
  • ゴボウ(斜め薄切り)
    10cm(70g)
  • 厚揚げ豆腐(厚さ8mmに切る)
    1/2丁(約400g)
  • 赤パプリカ(茎と種を取り、縦に幅約1cmに切る)
    1/2個(70g)
  • 春菊(長さ6cmに切る)
    2束(160g)
  • 紹興酒
    大さじ1
  • 豆板醤
    小さじ1/2
  • 煮汁①
    鶏スープの素
    小さじ1強
    600ml
  • 煮汁②
    鶏スープの素
    小さじ1/2
    200ml

作り方:
1.豚肉を粗微塵に切ってから包丁で少々叩く。ボウルに叩いた豚肉とAを合わせてよく混ぜる。4つに分け、団子状に丸める。

2.鍋に1と煮汁①、長葱、生姜を入れて沸騰させる。紹興酒と豆板醤、かぼちゃ、ゴボウを加えて約10分間中火で煮る。途中で煮汁②と厚揚げ豆腐を入れる。

3.赤パプリカ、春菊を入れて火を止める。

「豚肉は白と赤、春菊が緑、パプリカが赤、カボチャと生姜が黄色、厚揚げ豆腐と長葱が白、ゴボウが黒です。5つの内臓に直接届く栄養素が全部入っているので、身体の中から元気になって免疫力を高めてくれます」

日本では捨ててしまいがちな生姜の皮、パプリカのワタの部分もそのままいただきます。薬膳では、皮に微毒があるジャガイモやサツマイモ、銀杏、柿等以外は、素材を丸ごといただく「一物全体(いちぶつぜんたい)」の考え方が大切にされています。生姜も丸ごといただいて、食べ終わった後には体がポカポカ。身体が温まるだけで免疫力UPの効果があるそうなので、風邪をひきやすい冬にはぴったりですね。

Part.2では女性に嬉しい美肌鍋レシピをご紹介。どちらも簡単でおいしいので是非試してみてください。

※このページの内容は、中国の昔からの民間療法や、年配の方から伝え聞いた話を基に構成しています。
病気やその他の疾患に、必ず効果があることを保証する訳ではないことをご了承ください。

INFORMATION

パン・ウェイ 料理スタジオ
住所/渋谷区富ヶ谷1-49-6 代々木公園ISIハウス
URL/http://www.pan-chan.com/index.html
お料理教室では旬の食材をふんだんに使った、おいしくて身体によい中国の家庭料理を提案しています。「パン・ウェイの食べる薬膳教室」は実習なしのサロン形式、その他は実習形式の教室。どちらも少人数で楽しく学んでいただけます。

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