おいしく“たべる”。<連載>

夏の疲れに効く、
パン先生流・リカバリー料理

豚肉の黒酢炒め 焼き茄子のせ

撮影/栗原大輔[Roaster] 取材・文/山下俊太[Roaster]

まだまだ残暑が厳しいこの時季は、夏の疲れが身体にたまりがち。ぐったりしてしまった身体を元気づけてくれるような、簡単レシピはないものかな? そんな気持ちから、今回も中国薬膳を取り入れた家庭料理を教えているパン・ウェイ先生の教室におじゃましました。夏バテとは無縁とばかり、はつらつとした笑顔でむかえるパン先生が、晩夏のリカバリー料理として教えてくれたレシピは「豚肉の黒酢炒め 焼き茄子のせ」。疲労回復が期待できる、旬の食材が盛りだくさんの一品です。

豚肉の黒酢炒め 焼き茄子のせ

材料:(2人分)

  • 茄子
    2本
  • 豚バラ肉(8mm角×16mmの拍子木切り)
    150g
  • 生姜(微塵切り)
    小さじ1
  • 梨(皮を剥き5mm角切り)
    大さじ2
  • ニンニク(微塵切り)
    小さじ1くらい
  • 香菜(シャンツァイ)
    適量
  • 菊の花びら
    適量
  • (あれば)クコの実(水に戻す)
    適量
  • 黒酢
    大さじ1
  • 白胡麻油
    大さじ2+小さじ1
  • 紹興酒
    大さじ1
  • 黒砂糖
    大さじ2
  • 醤油
    大さじ1.5

「その季節の旬の食材を素直に摂るのが薬膳の基本。中国古来の考え方だと、肺が弱くなる晩夏や初秋に食べると良いのは、梨や茄子などの身が白い食材なんです。肺にうるおいをあたえ、乾燥から守ってくれるとされています」

料理に梨を使うの? と思うかもしれませんが、中国ではフルーツはあくまで“木の実”。フルーツを単体で味わうことの多い日本と違って、食材として調理に使うことは珍しくないのだとか。今回は角切りにして散りばめて、見た目にも食感にもアクセントを加えます。

「茄子はたくさん食べないと! 身体の熱を取ってくれるので、まだ暑さの残るこの時期にオススメ。しかも皮の黒い成分は、顔や足のむくみを取るのに一役買ってくれます。なので、皮までまるごと食べてくださいね」

仕上げに使うという菊の花びらもポイント。粘膜の修復や解毒作用、体温や血圧の上昇を抑えてくれるなどの働きがあるそう。

「菊は中国で古くから食用として栽培されていて、“不老不死の薬”とまで信じられていた縁起の良い花なんです。実際、万能と言えるほど身体に良い成分がたっぷり。生のものがベストですが、ない場合は乾燥させたものでもOKです」

「菊は中国で古くから食用として栽培されていて、“不老不死の薬”とまで信じられていた縁起の良い花なんです。実際、万能と言えるほど身体に良い成分がたっぷり。生のものがベストですが、ない場合は乾燥させたものでもOKです」

初秋の味覚・茄子の上に、“先人の教え”がたっぷり乗った「豚肉の黒酢炒め 焼き茄子のせ」。凝っているようですが、実は簡単に調理できるんです。食材の切り方や使用する調味料などのポイントを押さえながら、作り方を見ていきましょう。

作り方:
1.食材を切る。
• 茄子……ヘタを取り、縦に半分にカット。火がよく通るようにカット面に網状に切れ目を入れる。
• 豚肉……8mm角×16mmに拍子木切りする。細く切るのが苦手という人は、半ナマに冷凍させた豚肉を切るとスムーズに切れる。
その他、梨は皮を剥いて5mm角に角切り、生姜とニンニクは微塵切りに。

2.茄子を焼く。フライパンに引く油は、味に品が出るように白胡麻油を大さじ2。茄子の両面に色が付くまで、フライパンにぐいぐいと押しつけながら焼くのが、早くとろとろに仕上げるためのコツ。

⒊豚肉を炒める。小さじ1の白胡麻油で生姜を炒め、香りが出てきたら豚肉を入れる。

4.肉の色が半分ほど変わったら、紹興酒と黒砂糖を追加。黒砂糖はミネラルが豊富で風味もアップしてくれる頼れる調味料。しばらくしたら醤油も加え、とろみが少々出るまでしっかり炒める。

5.黒酢を加えて全体に絡むように炒める。火を止め、ニンニクを入れてよく混ぜる。

6.盛りつけ。お皿に2を盛り、その上に5と、角切りにした梨、香菜、菊の花びらの順にのせる。お好みでクコの実を添えれば完成!

デトックス食材で身体を中からキレイに

「デトックス効果のある食材を添えて解毒するという考え方は、実は日本でも知らず知らずのうちに行われているんです。魚のお刺身ひとつを例に挙げても、わさびや大根のつまなど、一緒に食べるものはどれも解毒作用のあるもの。定番の食べ合わせは、実は風味の相性だけでなく体内の消毒という面から見ても理に適っているんです」

今回のレシピに使用する香菜、生姜、ニンニク、菊の花もデトックス食材なのだとか。香菜はパクチーとも呼ばれ、日本でも最近ブームになっている食材ですが、東南アジアでは殺菌剤としても使われています。妊娠中の女性には、お腹の中の赤ちゃんにとって大切な栄養素である葉酸も豊富に含まれているのでオススメだとか。

「人の身体は気候の変化に弱いので、季節が変わる前に身体の内側から予防しよう、というのが薬膳の考え方。今のうちにデトックス食材を摂取して、身体をすっきり解毒し、秋に備えましょう」

毎日でも摂り続けたい黒酢パワー

今回のレシピ、調味料の一番のポイントは黒酢。それも、中国で製造されたものを使うのがいいそうです。

「日本の黒酢は、日本の料理に合うように作られているんです。薬膳の調理には、やっぱり中国の黒酢を使わなくっちゃ! 日本のものより、原料にもち米をたっぷり使っているので、色も風味も濃いのが特徴です」

黒酢は、米などを発酵させた醸造酢。アミノ酸が豊富に含まれていて、高い疲労回復効果があるとされています。

「黒酢は中国ではおなじみの調味料で、夏疲れに効果的なんです。黒酢を日常的に食卓に取り入れていることもあってか、中国の人は夏でもエネルギッシュ! 夏バテもしないから、そもそも中国には『夏バテ』という言葉がないんですよ(笑)」

「中国製の濃い黒酢でも、大さじ1をリンゴジュースで割るととても飲みやすくなります。それを1日に1杯を目安に1ヶ月。騙されたと思って試してみてください。きっと毎日を元気いっぱいに過ごせるようになりますよ! 私みたいにね(笑)」

パン先生の元気の源でもある黒酢を使った「豚肉の黒酢炒め 焼き茄子のせ」を食べて、厳しい残暑を乗り切りましょう。

※このページの内容は、中国の昔からの民間療法や、年配の方から伝え聞いた話を基に構成しています。
病気やその他の疾患に、必ず効果があることを保証する訳ではないことをご了承ください。

INFORMATION

パン・ウェイ 料理スタジオ
住所/渋谷区富ヶ谷1-49-6 代々木公園ISIハウス
URL/http://www.pan-chan.com
料理教室では旬の食材をふんだんに使った、おいしくて身体によい中国の家庭料理を提案しています。「パン・ウェイの食べる薬膳教室」は実習なしのサロン形式、その他は実習形式の教室。どちらも少人数で楽しく学べます。

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