“きもち”をたかめる。<連載>

小さな備えが命を救う!
頑張りすぎない「プチ防災」

撮影/菅原景子 取材・文/岡林敬太

防災用品を前にする高荷智也さん

3.11が目前に迫り、防災意識が高まりつつある今日この頃。「何か備えをしなければ」と思いつつも、日々忙しく、なかなか手をつけられていない人も多いのでは? そこで今回は防災アドバイザーの高荷智也さんを講師としてお招きし、今日から簡単にはじめられる「プチ防災」の心得を紹介。いざというときのために最低限知っておくべきこと、用意しておくべき防災グッズを教えてもらいましょう。

命を守るためには
安全な家に住むのが一番!

防災の準備は何からはじめればよいのか? この問いに対し高荷さんは、「命を守る準備からはじめましょう」と即答しました。

「防災リュックや非常食を買いそろえて、『よし、これで大丈夫だ』という方もいますが、住んでいる家が倒壊してしまったら元も子もありません。まずは『死なない環境をちゃんと作る』ことを防災の出発点にしてください」

死なない環境とはすなわち、「安全な家に住むこと」だとか。

「大きな地震の直撃を受けても、一発で倒壊しない家に住んでいれば、地震対策における最重要事項の半分は終わっていると言えます。『1981年6月1日』よりもあとに認可を受けた、いわゆる『新耐震基準』の家であれば、基本的に震度6強の直撃を受けても即座に倒壊する可能性は低くなります。そういう意味では、究極の防災対策は『引っ越し』なんですよ」

とはいえ現実問題、「今すぐ引っ越しをするのは無理」という人がほとんどでしょう。また、安全な家に住んでいる人でも、それだけで十分とは言えないそう。そこで今回は、誰もが今日からはじめられる「プチ防災」の数々を紹介していきます。

リュックを背負う高荷さん
もともとは趣味で防災にまつわるブログを書いていたという高荷さん。3.11の東日本大震災の直後からアクセス数が急増したことをきっかけに、防災アドバイザーとしての活動を本格化。現在は、講演会、雑誌コラムなどで活躍するほか、YouTube「死なない防災!そなえるTV」やVoicy「死なない防災!そなえるらじお」で防災知識を配信中です。

今からはじめる、
被災後を想定した3つの「備え」

災害時はとにかく命を守ることが最優先ですが、命が助かった場合を想定して、その後の対策を現段階から進めておくことも大事です。今住んでいる環境下で無理なく準備できることを、1 室内の安全対策2 逃げるための準備3 被災後のための備蓄、の順で教えてもらいました。少しハードルが高そうと感じる備えもあるかもしれませんが、まずはできる範囲で取り入れてみましょう。

「備え」1 室内の安全対策

「家そのものが頑丈だとしても、室内の家具や家電が倒れると、下敷きになって命を落とす危険性があります。死を免れたとしても、避難経路が塞がれて、家から出られなくなるケースも」

一人暮らしの人は特に、家で何かあったときに誰からも気づかれずに死んでしまうリスクがあるため、以下に挙げる室内の防災対策をしっかりしておきましょう。

「まず、家具の下敷きになる・避難経路が塞がれるといった事態を防ぐために、背の高い家具や家電は、金具・粘着シート・転倒防止の『突っ張り棒』などで固定しておくことが大事。また、棚の中にある『落ちて当たると致命的になるもの』や『落ちると避難経路やドアを塞ぐもの』も、『固定ベルト』で落下防止対策をしておきましょう。窓ガラスの飛散を防ぐシート、火災に備えた消火器、停電時に使える自動点灯ライトなどもセッティングしておくと、さらに安心です」

これらのアイテムは、「日常生活を邪魔しないもの」や「インテリアに溶け込むオシャレなもの」を積極的に取り入れることで、「使わないからしまってしまう」「目障りなので片付けてしまう」といった事態を防げると言います。ここから紹介するアイテムはいずれもホームセンターやオンラインショップで購入可能なので、少しずつそろえていきましょう。

対策しておきたい!室内の防災

▶︎室内の家具の固定(突っ張り棒・固定ベルト)
背の高い家具の転倒を防ぐために「突っ張り棒」の設置を。「四隅を固定する必要はなく、奥の角2箇所を固定すればOK。これで震度6強までは耐えられるはずです」。そして、棚から物が落ちることを防ぐ「固定ベルト」もセットし、落下防止対策をすること。
棚を横断する固定ベルトと天井と棚を突っ張っぱる突っ張り棒
物が多くてスペースのない部屋でも、ご覧のように防災対策は可能。「突っ張り棒は『家具の最上部と天井との距離』を測ってから、適切な長さのものを購入しましょう。落下防止ベルトは、ラックの各段の前方を横断させればOKです」
▶︎消火器
地震で火災が起きると被害がさらに甚大になるため、一家に一台欲しいのが消火器。住宅用消火器はホームセンターやオンラインショップでも購入できます。「コンロや台所の近くに置くと一緒に燃えてしまう可能性があるので、廊下や玄関に置くのがおすすめ。オシャレな色の商品を買えば、インテリアの邪魔をしないはずです」
▶︎窓ガラスの飛散防止シート
地震や台風で割れたガラスは怪我につながるため、窓全体に「飛散防止シート」を貼っておきましょう。「そうすれば、仮に割れても飛び散らないし、日頃は紫外線カットもしてくれるので、家具の日焼けを防ぐ効果も。ネット上にはオーダーカットフィルムの店があり、窓ガラスの大きさで注文すると、ぴったりのサイズを入手することもできます。ただし窓の作りによってはシートが貼れないものもあるため、事前に確認を」
▶︎自動点灯ライト
夜中に地震や台風で停電すると、どこに何があるのかが見えなくなります。そんなときに役立つのが、自動点灯ライト。「写真の商品は、普段は3口の電源タップですが、コンセントに挿しっぱなしにしておけば内蔵充電池がフル充電になり、停電すると勝手に光ってくれるすぐれもの。引っこ抜けば懐中電灯として使えます」。コンセントを塞ぐのではなく、コンセントを増やしてくれる商品なので、日常生活も便利に!
コンセントにささった自動点灯ライト

地震対策上、「家具の配置にもできれば気を配ってほしい」と高荷さんは呼びかけます。

「背の高い家具は、倒れたときにドアや避難経路を塞ぐ場所や、ガラスを割るような場所には配置しないこと。そして、どこに配置するにせよ、先述の『固定』を忘れないでください」

では、在宅中に地震が来たら、まず家のどこに逃げ込めばよいのか?

「荷物が崩れてこない場所を1つ決めておき、そこに逃げましょう。おすすめは『廊下』です。物が少ないし、全部の部屋につながっていますから、避難場所に最適です」

「トイレに逃げ込むと安全」というのは、“昔の定説”だとか。

「在来工法の家の場合、柱の多いトイレは安全と言われていましたが、新耐震基準を満たしている最近の家なら、どこにいても家屋に潰される心配はありません。トイレは転倒・落下物が少ないという意味では安全ですが、閉じ込められる可能性もあるので、トイレ中に地震が来たら、すぐにドアを開けましょう」

「備え」2 逃げるための準備

災害が起きたからといって、闇雲に外へ逃げ出せばいいというものではありません。場所によっては、そのまま家の中に留まったほうが安全なケースもあるからです。この「避難するべきか否か」の正しい判断を下すために、事前にチェックしておきたいのが「重ねるハザードマップ」です。

「重ねるハザードマップは国土交通省が運営するWEBサイトで、防災に役立つ情報を1つの地図上に重ねて閲覧できるシステムです。住所を入力した場所の『洪水』『高潮』『土砂災害』『津波』などのリスクをあらかじめ把握することが可能。登録不要で、誰でも無料で閲覧できますので、その気になれば10秒でチェックできます」

ハザードマップで想定されている規模の災害が生じた場合、被害の状況はおおむね的中するらしく、たとえば近年の水害に関して言えば、「ここは洪水によって何m浸水する」などと書かれている場所で洪水が発生した場合は、ほぼその通りの結果になったのだとか。

「つまり、ハザードマップ上で特に危険がなければ、災害が起きてもそのまま家に留まっているほうがいいです。逆に、危険エリアであるならば避難をすべき、という判断を下せるのです」

避難が必要な場合は、続いて「自治体(市区町村)の地図」をチェックしましょう。

「各自治体が街のより詳しい防災マップを作っており、そこには『最寄りの避難先』も載っています。まずはハザードマップ、次に自治体の地図。この2段階で、自分の取るべき行動を把握しましょう」

ハザードマップを紹介する高荷さん
「たとえば、スターバックス コーヒー ジャパン サポートセンターの住所(目黒駅近く)をハザードマップで見てみると、災害リスクは何も表示されないので、在社中の方はそのまま会社に留まっていても安全です。でも目黒川周辺を見てみると、『洪水』のリスクを示す薄黄色い部分が見られ、そこをクリックすると『想定される浸水深:0.5m未満』と出ます。つまり、このあたりの地下や1階にいる方は浸水の被害に遭う可能性があるけれど、ビルの上層階にいる方は避難しなくても大丈夫、という判断が下せるわけです」

正しい避難のタイミングとは?

避難するタイミングは、自治体が発令する「警戒レベル」に従うのが確実だそう。発令状況は「各自治体のWEBサイト」にて確認を。以下のように、危険度が高くなるほど、3→4→5と警戒レベルの数字が大きくなります。各レベルで、すべきことを教えてもらいました。

警戒レベル3 高齢者等避難
「避難に時間を要する災害弱者(高齢者、赤ちゃん、妊婦、障がいのある方、ペット連れなど)と、その支援者は、今すぐ自治体が指定する避難場所へ避難しましょう。また、それ以外の方は、避難の準備を整えてください」
警戒レベル4 避難指示
「家に留まっていると危険な方は全員、このタイミングで速やかに避難しましょう。『高層階に住んでいるため家が浸水しない・新耐震基準なので家が崩れない』という方は、そのまま家に留まっても大丈夫。ただし、ライフラインが止まる可能性があるため、備蓄が必要です」
警戒レベル5 緊急安全確保
「すでに災害が発生しており、極めて危険な状況です。まだ避難ができていない方は、外に出ると命を落とすリスクがあるため、浸水や土砂災害の影響を受けづらい、家の中の少しでも安全な場所に移動し、死なないための最善の手段を取ってください」

いざ避難するとなったら、「防災リュック」(詳しくは後述)を背負って外へ出ましょう。

「備え」3 被災後のための備蓄

ここまでの「室内の安全対策」と「逃げるための準備」をしっかりしておけば、災害で即死する可能性はほぼありません。しかし、東日本大震災を例に挙げると、震災全体における犠牲者の数は約22,000人に上りますが、このうち約4,000人は災害そのものではなく、命が助かった後の被災生活で亡くなられる「災害関連死」による被害となります。災害関連死とは、災害直後は助かったものの、その後の避難生活における疲労の蓄積や治療の滞り、環境の悪化などが原因で命を落とすこと。高齢者は特に要注意です。

「災害関連死を予防するために、今のうちから、在宅避難(避難所へ避難するのではなく、自宅で避難生活を送ること)を可能にするだけの『備蓄』をしておきましょう。ちなみに、避難所に行くことは義務ではありません。避難指示が出たとしても、家族が無事で、なおかつ備蓄もあれば、家で生活しても構わないです」

備蓄は、以下の5つをそろえておくとよいそうです。

▶︎ないと生活が成り立たない個別用品
「持病の薬や、メガネ、コンタクトレンズ、杖、補聴器などは、ないと生活が困難になるので、必ず予備を持っておくこと。あとはアレルギー持ちの方はそれ用の食品、赤ちゃんや要介護のご家族がいる方はオムツやお尻拭き、ペットがいるならペットフードなどですね。消耗品に関しては、使い切ってから買いに行くのではなく、『常時1ヶ月分の在庫を手元に置いておき、使った分はこまめに補充する』という形で備蓄しましょう」
▶︎カセットコンロ
「『インフラ代替品』の中で、真っ先にそろえたいのがカセットコンロ。これさえあれば家の中にある食材をほとんど食べられるようになります。お米を炊いたり、ラーメンを作ったり、お湯を沸かしてスープを作ったりできるので、被災時の食生活がグレードアップします。特に冬場は温かいものを食べると体力維持につながりますし、メンタルヘルスにも好影響。夏場も食べ物に火を通すことで食中毒予防につながります。一般的なガスボンベは1本で約60分燃焼するので、2、3人家族なら1日あたり1〜2本、それを1週間分備蓄しておくと安心です」
ガスコンロとガスボンベ
▶︎食料・水・日用品
「食料や水などの備蓄量の目安は『最低3日分、できれば1週間分』。3日分はできればそのまま食べられる非常食がいいですが、1週間分すべてを非常食にすると高くつくし管理も面倒なので、普段食のカップ麺、レトルト食品などを、特売日にちょっと多めに買っておく『日常備蓄』を推奨します。いつかは食べるものを先に買っているだけなので無駄なお金がかからないし、普段食べているものなので味もわかっていて安心。また、災害時における貴重なタンパク源となる缶詰も、賞味期限が長く保管もラクなのでおすすめです。1週間程度の備蓄なら、キッチンの下棚などに保管することも可能でしょう」
▶︎非常用トイレ
「断水時の必需品。特にマンション住まいの場合は、食べ物を1週間分用意するなら、非常用トイレも1週間分用意するとよいでしょう。使い方は簡単。袋と粉がセットで入っているので、袋をご家庭のトイレの便器にかぶせて、用を済ませる。そのあと凝固剤を入れると、液体が全部固まるので、袋を縛って、燃えるゴミの日までベランダなどに置いておくだけです。1人につき1日5回と計算し、家族全員の1週間分を用意しましょう」
非常用トイレ袋と臭わないトイレセット
▶︎ポータブル電源
「やや高価にはなりますが、キャンプ好きにも愛用されているポータブル電源(写真下右)を普段から家のコンセントに挿しっぱなしにしてフル充電しておけば、停電時の強い味方に。この小型タイプ(200W)のもので小型扇風機を約5時間稼働させたり、ノートパソコンを約4回フル充電できたり、iPhone13を約18回フル充電したりすることができます。日中晴れていれば、小型のソーラーパネル(写真下左)とつないで充電も可能です」
ankerのポータブル電源

在宅時の防災の心得は以上です。次の章では、外出時の防災グッズを紹介しましょう。

「ミニ防災ポーチ」を作り
外出中は常に携帯を!

外出先で突発的な災害に見舞われたときのために、肌身離さず持ち歩きたいのが「ミニ防災ポーチ」。必要最小限の防災グッズを小さなポーチに詰め込み、通勤用のカバンやリュックの中に入れておくだけでOK。有事の際も、これさえあれば当座を凌げるはず。そして自宅の玄関には、もっと大容量の「防災リュック」も置いておきましょう。

いつでも持ち歩ける、ポーチに入れておきたい防災グッズ

いつでも持ち歩ける防災グッズ15点

外出時に携帯していると、いざというときに役立つ「ミニ防災ポーチ」。中には何を入れておけばよいのでしょう?

「『命を守ることにつながるアイテム』を優先しましょう。身の安全を確保するもの、手当てと衛生に役立つもの、そして食料などですね。今回はサンプルをお見せしますが、ポーチ本体も、入れるアイテムも、すべて100円ショップで購入しました。中身はアレンジして構いませんが、重くなると嫌になって持ち歩かなくなるので、まずは最小限からスタートするのがおすすめ。そして持ち運びできる範囲内で、入れるアイテムを徐々に増やしていくのがいいと思います」

高荷さんがそろえた、ポーチの詳しい中身を見ていきましょう。

1 非常用トイレ
「電車やエレベーターに閉じ込められている最中などに、尿意を催したときのため『小便用の非常トイレ』を。実際に人前で使えるかどうかはその場にならないとわかりませんが、ないと不安なので、『お守り』として持っておきたいですね」
2 キャラメル
「カロリーの高いキャラメルを非常食として一箱。チョコレートもいいですが、キャラメルだと小分けにできてよりいいですよ。一口練り羊羹も、夏でも溶けず、冬でも凍らず、叩いても潰しても割れず、おまけにカロリーも高いのでおすすめです」
3 雨具
「重要アイテムの1つが雨具。雨に濡れたままだと低体温症で命を落とす恐れがあるので、必ず入れておきましょう。両手を塞ぎたくないので、傘ではなくカッパがおすすめ。冬場は体温維持するための防寒着にもなりますよ」
4 ミニバッグ
「避難所などで支援物資を受け取る場面もあるかもしれないので、物をまとめて持ち運べるミニバッグが1つあると便利。避難所などで受け取った物をバッグに入れたまま保管しておけば、紛失したり、あたりを散らかす心配もありません」
5 家族の連絡先・小銭
「スマートフォンの充電が切れてしまう場面に備えて、家族や友人の連絡先を書いたメモ1枚と小銭をポーチに入れておきましょう。災害時に強い公衆電話を使えば、大切な人と連絡を取れます。メモはかさばらないので携帯するのもラクチン」
6 笛
「命を守るために絶対持っておきたいのが笛です。室内やエレベーターの中に閉じ込められてしまったときなどは、笛を吹いて助けを呼びましょう。『助けて』と叫ぶ声よりも笛の音のほうが、災害時の喧騒の中でもキャッチされやすいです」
7 乾電池
「懐中電灯などの電池切れが不安なので、予備の電池を。電池で動くアイテムを複数持つ場合は、単三で動くものと単四で動くものをなるべく混在させないようにしましょう。どちらかに統一すれば、電池の使い回しができるからです」
8 懐中電灯
「地下鉄や地下街などにいるときに停電して真っ暗になると、何も見えずに身動きが取れなくなってしまうので、懐中電灯は必須アイテム。両手を塞がないヘッドライトだと、より便利です」
9 アルミブランケット
「しっかり体に巻きつければ、冬でも汗ばむぐらいに防寒できます。屋外での風避けにも最適。また、ケガをしたときに三角巾や担架の代わりになるほか、雨に降られたときに防水シートの役割も果たしてくれるなど用途は幅広いです」
10 除菌アルコールウェットシート
「手を消毒するためのシート。避難所の集団生活においては、衛生管理はとても大事です。また、夏の食中毒対策、冬の感染症対策、そして新型コロナウイルスを拡大させないためにも、手をきれいにする道具は準備しておきましょう」
11 ポーチ
「すべてのアイテムを包み込むポーチ。カバンやリュックに入れる前提なので、A6サイズぐらいが適切かも。写真のポーチは無機質ですが、もっと可愛いデザインのものにしても。ポーチではなく、ミニボトルにアイテムを入れてもOKです」
12 圧縮タオル
「使用前はUSBメモリほどのサイズなのに、水を含ませると膨張してタオルになります。雨に濡れたときなどにこれで体を拭けば、そのままタオルに早変わりするので一石二鳥。作りは割と丈夫なので、乾かせば何度か再利用できます」
13 ビニール袋
「万能アイテムなので、ぜひご準備を。ゴミ袋として使えるのはもちろん、バッグやトイレの代わりになるし、被れば雨具にもなる。段ボールやリュックの中にセットすれば給水タンクにも」
14 絆創膏
「災害時は散乱したガラスなどで切り傷を負うことも。医療機関が麻痺していて治療を受けられない可能性があるので、応急処置用の絆創膏を入れておきましょう。ポーチにゆとりがあったら、傷あてパッドも入れておくとよいかも」
15 軍手
「災害時は危険物が散乱しているので、手を守るために手袋を。写真の商品は『防刃手袋』。ガラスや刃物を握っても大丈夫なので、軍手よりもおすすめです」

このうち、「命を守る」という意味で必須なのは、3 雨具6 笛8 懐中電灯だと高荷さんは言います。その3つは必ず入れるとして、あとは容量や重量、自分の特性などを踏まえつつ、ポーチの内部構成を考えましょう。もちろん、ここにないアイテムを入れてもOKです。

人数分の「防災リュック」を
家の玄関付近に置いておく

続いては、家から避難所へ向かうときに持ち出したい「防災リュック」の準備について。

「防災リュックには、『避難場所まで素早く安全に移動するためのもの』を中心に入れましょう。たとえば、ヘルメット、手袋、ヘッドライト、笛など。さらに、雨具や着替え、体を拭くためのタオル、夏場であっても使い捨てカイロも入れておきたいところです。あとは情報収集のための小型ラジオや、スマートフォンの充電器などがあると心強いですね」

水と食料は要らないのか? と感じた読者も多いはず。

「水と食料も必要ですが、一番重くてかさばるものなので、最後に入れて重量を調節してください。リュックの重さは『5kg』が目安。それぐらいまでなら子どもや高齢者でも背負って避難所まで歩けますが、それよりも重くなると人によっては背負えなかったり引っくり返ったりして、避難所にたどり着けなくなるので要注意です」

家族で住む場合は人数分のリュックを用意し、すぐに持ち出せる玄関付近に置いておくこと。乳幼児のいる家庭では、大きなリュックに子どもの分も詰め込むなどの工夫をしましょう。

「ホームセンターなどに行けば、主なアイテムがあらかじめ詰め込まれたオシャレな防災リュックも売っています。不足しているアイテムがあれば、各自買い足してください」

家に置いておくリュックに入れておきたい防災グッズ

家に置いておく防災グッズ6点
重いリュックを背負うのが苦手な人は、たとえばこんな構成も。まず、前段で紹介した「3 ミニ防災ポーチ」を作る。ここには大事なものの多くが詰め込まれていますが、不足しているものも。そこで、「1 非常食」と「2 ラジオ」と「5 水」と、女性なら「6 生理用品」をプラスし、それらすべてを「4 リュック」に入れる。これなら軽量だし、なおかつ必要最小限のものもそろいます。雨に濡れると使えなくなるものあるので、それぞれのアイテムはファスナー付きの透明プラスチックバッグで包んでからリュックに入れましょう。

情報収集はスマホが一番。
それがダメならラジオで!

災害時の情報収集や安否確認は、まず「スマートフォン」を使うのが一番だそう。

「災害で停電が起きても、携帯の基地局はしばらくの間バッテリーで動くようになっているため、最初の数時間は普通にスマホを使える可能性が高いです。なので、その間はスマホを使って情報収集なり、家族の安否確認なりを行いましょう」

しかし停電が長引くと、やがて基地局がダウンし、スマホが使えなくなる可能性もあるとか。家も停電しているため、当然Wi-Fiも使えません。

「そうなったとき、最後まで使える情報源は電波で届く『ラジオ』です。一家に一台はポケットラジオを用意し、避難時も防災リュックに入れておくことが大事。ちなみに『radiko(ラジコ)』はインターネットラジオなので、基地局がダウンした段階で使えなくなります」

いざというとき役に立つ情報収集ツール

以下は、高荷さんが推奨するスマホで使える便利ツール。今のうちから、いざというときのために準備しておきましょう。

【自治体のTwitter】
「災害時のローカルな情報は、自治体が運営する防災関連のTwitterでも流れます。自分の住む都道府県のみならず、市区町村のアカウントもフォローしておきましょう。たとえば港区だと『港区 防災危機管理室』、新宿区だと『防災・防犯関連情報(新宿区危機管理課)』というのが当該アカウントになります」
【アプリ】
「防災アプリは『Yahoo!防災速報』か『特務機関NERV防災アプリ』がおすすめ。どちらも無料で、インストールさえすればOK。iPhoneにもAndroidにも対応しています。これらのアプリを入れておけば、事前に登録した場所や今いる場所に避難指示や緊急地震速報などが出た場合にすぐ通知してくれます」
【LINE】
「電話に比べて災害時につながりやすいのが、LINEです。電話回線ではなく、インターネット回線を使っているのがその理由。今のうちから家族とLINEグループを作っておき、災害時の安否確認に使いましょう」
イスに座って話す高荷さん

最後に高荷さんが警鐘を鳴らします。

「水害などに関してはハザードマップを見れば安全な場所が予測できますが、突然発生する大地震に関しては誰も正確には予測できません。北は北海道から南は沖縄まで、いつでもどこでも、なんなら今この瞬間に大きな地震がくるかもしれない。なので、自然災害大国の日本に住む以上、防災はやらなければいけないことなんですよ」

ただ、そうは言っても、「頑張りすぎる必要はない」とも付け加えてくれました。

「防災は長距離走なので、張り切ってお金をかけすぎたりすると続かなくなってしまいます。息切れして準備ゼロになるよりは、ちょっとずつ準備を進めていただいた方がはるかにいいと思いますので、『なるべくラクをできる防災』を心がけてみてください」

力まず無理せず油断せず、今日できることからコツコツとはじめてみましょう。

INFORMATION

高荷智也

備え・防災アドバイザー。会社員として勤務する傍ら、備え・防災をテーマとしたWEBメディア「備える.jp」を立ち上げ、個人と家庭向けの防災情報の提供を開始。「自分と家族が死なないための防災」をテーマに、地震・水害・パンデミックなどの自然災害から身を守る術をわかりやすく伝える活動に従事。防災系YouTuber・Voicyパーソナリティとしても活躍中。
URL/https://sonaeru.jp/works/t_takani/

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