“きもち”をたかめる。<連載>

上質な睡眠で体質改善。

撮影/田形千紘[Roaster] モデル/阿部朱梨 取材・文/赤木百[Roaster]

みなさん、朝はすっきりと目覚めていますか? 少し暖かくなってきたとはいえ、心地よいベッドからサッと出るのは難しいですよね。朝起きられない、昼間眠くなる、夜眠れないなど睡眠に悩みを持つ方は多いはず。そこで、睡眠コンサルタントの友野なおさんを訪ね、実際に体質改善につながったという睡眠法を教えてもらいました。実は友野さん、以前は東京ディズニーリゾートの運営会社に勤めていたそう。それがなぜ睡眠のアドバイザーとして活躍するようになったのか、まずはそのきっかけから伺いました。

睡眠コンサルタント 友野なおさん

「入社して半年、東京ディズニーリゾートの親善大使に選ばれたんです。キャラクターと病院や施設を訪問し、パークに来られない子どもたちに夢や希望を届けるという任務だったのですが、そのなかで出会った男の子が、私が任期を終えた後に亡くなってしまって……。そのことを機に、病気になってから治すのではなく、いかに予防していくかということを生涯のテーマにしたいと思うようになりました」

予防することの大切さを伝えたいと思った友野さんですが、30歳を前にして自身が重度のパニック障害に陥ってしまいます。

「当時は職なし金なし男なし。今より15kg以上太っていましたし、症状が外に出られないほど重く、実家に引きこもってしまって。パソコンにかじりついて何かできることはないかと調べていたんです。今思えば、寝る時間すら削っていたので悪循環でした。そんな私を見かねて、ある日母が『もういい。とにかく寝て、すっきりしたら何か見えてくるかもしれないよ。今はすべてを忘れて寝なさい』って。それが自分の睡眠を見直そうと思ったきっかけでした」

寝ることで改善できるところまでやってみようと、藁をもすがる思いだったそうです。

まずは睡眠の長さや寝具を変えながら睡眠日誌をつけることにした友野さん。何の知識も情報もなく、最初の2ヶ月は手探りで、まるで人体実験だったそう。

「半年ほど経った頃、目に見えて症状が改善されはじめ、一年後には人生が変わったかのようでした。パニック障害だけではなくアトピーの症状も治まり、体重も自然に落ちていました。その不思議な体験をきちんと理解しようと本格的に勉強をはじめ、今に至ります」

あなたはちゃんと眠れてる?
睡眠チェックをしてみよう。

それでは、友野さんが講演の際に使うチェック表であなたの睡眠の質を確かめてみましょう。すべてにチェックを入れることができれば、質の高い睡眠をとれているということ。反対に、つけられない項目がひとつでもあれば、睡眠の質が悪いか量が足りていないかです。

□ 朝すっきり起きられる
□ 朝食を食べる意欲がある
□ 朝に排便がある
□ 休日に寝だめしない
□ 午前中に眠気はしない

質の高い睡眠をつくる、寝方と環境。

「『春眠暁を覚えず』と言われるように春は眠りやすい季節だと思われていますが、環境の変化が大きく、実は非常に寝にくい時期なんです。花粉症で眠れない方が増えるので、まずは顔の近くで使う枕やシーツをシルクのようなツルっとした素材に替えてみましょう。花粉が寝具につきにくくなり、寝やすくなります。また、寒暖の差が激しいので薄い毛布を何枚か用意して、日によって温度調節をするのもおすすめです」

日本では環境の変化に合わせた工夫が大切です。また、一年中、男女問わず試してほしい熟睡のコツもご紹介。できるものから試して上質な睡眠を目指しましょう。

寝る前のスマホをやめる。

「まず試してほしいのは寝る前にスマホを手放すこと。眠りの質を高めるのに最も即効性のある方法です。スマホはベッドには持ち込まない。それができたら寝る1時間前からは使用しないように慣れていきましょう。寝る前に目に光を入れないことが重要。夜、仕事のメールをスマホで確認するのはエスプレッソ2杯分、脳が覚醒すると言われているので絶対にやめましょう。ただ、スマホのおかげで時短になり、時間が確保できるということもあるので、あくまでモノの奴隷にならない意識が大切です」

朝起きたら目に光を入れる。

「光を浴びると、そこから約15時間後に眠くなるように脳の中でスイッチが押されます。寝る準備は朝から始まるんですね。自然の光が入るよう、カーテンを開けて寝るのもおすすめ。夜でも外が明るい環境でなければ、遮光カーテンはNGです。寝る前はやや暗めの暖色系ライト、就寝時は真っ暗にして、朝と夜のメリハリをつけましょう」

0時から7時は寝るようにする。

「まずはこのサイクルを守りましょう。『22時から2時がお肌のゴールデンタイム説』は実は科学的根拠がありません。無理してベッドに早く入るより0時就寝で最初の3時間に熟睡することが大切。ただし理想の睡眠時間は個人差があるのであくまで目安にしてください」

就寝2時間ほど前に入浴で身体を温める。

「実はお風呂から出た直後は血圧も心拍数も高くなり、眠りにくい状態。寝る2時間ほど前に、40℃のお湯で約20分入浴するといいでしょう。良い睡眠のためには首、手首、足首をしっかり温める全身浴がおすすめです」

部屋着とパジャマをわける。Tシャツ、ジャージはNG!

「Tシャツやジャージは肌ざわりや吸汗性が悪く、快眠の妨げになります。必ずパジャマに着替えましょう。素材は保温性、吸放湿性に優れたオーガニックコットン やシルク、リラックスできるガーゼがおすすめ。もちろん男性にも。形は上下セパレートの長袖がベストです」

枕は立っているときと同じ姿勢を保つ高さに

「実は本当に自分に合った枕を使うと、なんの感動もないんです(笑)。それくらい首から肩のラインが自然で、立ったときの姿勢をそのまま横にしたような状態なんですね。素材は好みですが私は通気性のよいパイプを使っています。頭が沈みすぎないものを選びましょう」

イライラして眠れないときは
マインドフルネス瞑想を取り入れる

「私は寝る前の10分間、いま世界的に注目されるマインドフルネス瞑想を実践しています。夜はマイナス思考に陥りがち。心が乱れてなかなか寝つけない方は、瞑想で1日のストレスをリセットしましょう。少し前まで怪しいイメージがあった瞑想ですが、科学的に効果があることがわかっています」

よい睡眠をきちんと習慣化すれば身体の内側を根本から変えることができます。それを信じて、できることから改善してみましょう。

INFORMATION

友野なお
睡眠コンサルタント/産業心理カウンセラー。自身が睡眠を改善したことにより15㎏以上のダイエットと体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。著書『やすみかたの教科書』(主婦の友社)、『きょうの睡眠ダイエット: 4週間でヤセ体質に変わる』(主婦と生活社)など。
HP:http://tomononao.com/

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